銀→青
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『震えてなんて……!』
『いない』と言おうとする。が、万斉はまた笑った。
「拙者、先程から全く力を入れてないでござるよ」
『!?』
見ると、互いの刀は触れるか触れないかのところにいた。そうであるのに、刀が音を立てるということは……
「主の刀が、主の手の震えにより揺れ、拙者の刀に当たっているのでござる」
『っ!』
翼は、すかさず万斉と距離をとった。
「凶……か」
そう呟くのはメフィスト。以前、翼が15歳らしくなるのは吉か凶かと予想してい答えが、今出たのである。
何もない平和な日常を過ごすのならば、15歳らしくなることは良いことに違いない。
だが、翼は違う。万斉の言う通り、大きな名前を背負っている以上は常に大人以上の振る舞いをする必要があるのだ。
そうしなければ名折れである以前に、
命を落とす。
「翼殿、主はここへ来てどれほど経つのでござるか?」
『ハァハァ、教える気はない』
息を乱しながらも気丈に答える翼に、万斉は眉を下げて「やれやれ」と言う。
その間に、翼は息を整えた。
『ハァ、ハァ……』
こちらの世界に来ての自分の身の甘さを、自分でも痛いほど感じていた翼。だが、そんな窮地の中でも一つのことに関しては胸を撫で下ろしていた。
もし、万斉ではなく、あいつが来ていたら――
きっと自分はこれほどでは済まなかっただろうと、想像だけでも冷や汗をかく。
だが、それはあくまで想像……