廻る時空と黒の夢

□トリガー小話
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(魔王の面倒見が良いのは分かってるけど、マールの目の前でそれはタイミング悪過ぎよ〜っ)


一足遅く到着したルッカは内心焦りで頭を抱える。


何せクロノを受け止めた魔王の状態は俗に言うお姫様抱っこ。


「やっぱり二人はお付き合いしてるのねっ!!︎」


「ええぇっっ!?︎」

「そんな訳あるか。此奴が魔力で浮遊する方法を教えろというので、ついてっやっただけだ」


狼狽えるクロノの横で心外だと言わんばかりの魔王が事情を説明すれば、涙を零れんばかりに浮かべていたマールの瞳が悲しげに細められる。


「じゃあ、何で二人でこそこそしてるの…?」

「べ、別にこそこそしてた訳じゃ」

「皆に話すなと口止めされていたのだ。別段話す必要も無いと思っていたしな」


吃るクロノの台詞を遮り、魔王がフンと言い放つとマールの視線がクロノに集中する。


「…何で秘密にするの?」


責めるようなマールの視線に耐えきれなくなったのか、皆が注目する中クロノは口を開いた。


「……魔力で浮くやつ、俺からマールに教えたかったんだよ」


罰が悪そうなのと恥ずかしさからか視線を逸らすクロノに、ルッカがやれやれと歩み出る。


「マールの前で格好つけたかったんでしょ」


幼馴染みの足りない言葉を補足すれば、漸くマールはクロノの言いたい事が理解出来たらしい。


「じゃ、じゃあ私一人で勘違いしてたのーっ!?︎」

「ルッカがマールに変な事吹き込んだんだろ!」

「冗談のつもりだったんだけど、マールがあんまりにも本気にしちゃうんだもの、流石に焦ったわ…」

「ルッカ酷いよーっ」

「ごめんね、マール」


あやすようにマールの頭を撫でるルッカは何処か妹を慰める姉のようだ。


「でも元はといえば皆に黙ってたクロノ、アンタが悪いのよ?様子が変だってマールは心配してたんだから」

「ご、ごめんマール」


ルッカに睨まれたのと罪悪感から、クロノの口から直ぐに謝罪の言葉が出た。


「話は終わったようだな。それで、今回の特訓は続けるのか?」


三人が落ち着いたのを見計らって魔王がそう問い掛ける。


「その魔力で浮遊するのって、魔王が良く使ってるヤツよね。私達でも出来るものなの?」

「規模と潜在魔力にもよるが、貴様等の魔力であれば自身を浮かせるくらいは出来るはずだ。但し、一時的に魔力を扱うのと違い常に魔力をコントロールする必要がある」


魔王の説明に、マールの瞳が興奮で大きく見開かれた。


「私も出来る?」

「……魔力を扱う感覚を掴めるかは貴様達次第だ」




小さな溜息を吐いてそう魔王が答えれば、彼の教える生徒が一人から四人に増えたのだった。




「ふんんん…!」

「それでは力み過ぎだ、もっと身体の力を抜け」

「マール、柔らかい風に包まれるのをイメージしてみなよ」

「う、うん」


「な、なかなか上手くいかないわね…」

「貴様は頭で色々と考えて過ぎだ。奴等は感覚で捉えるのに長けている、一度掴めれば後は自然と熟せるようになるだろう」

「本当、何だかんだ言って面倒見良いわよねアンタって……きゃあっ!?︎」


コントロールの上手くいかないルッカの身体が突然上空へと飛び上がりそうになり、魔王が咄嗟に彼女の腕を掴んで止めた。


「わ、悪いわね…」

「……貴様はその魔力のムラをどうにかしろ」




「あ、足が地に着かねえのは落ち着かねぇな…」




END


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