廻る時空と黒の夢
□トリガー小話 ビネガーの館
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ガルディア王国軍との戦に敗れた魔族がひっそりと潜伏する元魔王の館。
主が代わり『ビネガーの館』と名を改めたその屋敷のとあるカラクリ部屋にて
侵入者を迎え撃たんと次々にカラクリを起動させながら、ビネガーは侵入者の一人から突き刺さる鋭い視線に冷や汗を流していた。
(マズイマズイマズイ〜っ!!!!皆の手前、格好つけて新魔王ビネガーだと名乗ってしまったが、まさか奴等と魔王様が共に行動して、この館にまで踏み込んで来るなんてーーっっ)
脇に設置されたハンドルを必死に回し、連動する歯車と鎖がギャリギャリと激しく音を立てるが、そんなことを気にしている余裕はビネガーに無い。
人間達やカエル男ごときに負けるなどと思いもしないが、同行する人物が問題過ぎた。
膨大な魔力を操り魔族を率いていた先代魔王。
突如姿を消し行方が分からなくなっていた彼が、どういう訳かことごとく魔族軍の邪魔をしてきた人間達やカエル男と行動を共にし、戦いを挑んできたのだ。
(ワシの魔力では魔王様に敵う筈もないし、ソイソーの剣術もマヨネーの幻術だって通用しないっ!!)
先代魔王への算段が全く浮かばないビネガーの頭の中には文字通り「ビネガーピーンチッ!!」の一言で埋め尽くされそうだ。
しかし、それは真っ向勝負でぶつかり合えばの話。
このビネガーが考案し、改造したカラクリ部屋ならば、足りない魔力や戦力をも補える仕掛けが施してある。
進んでも戻される動く床。
天井から振り子の如く襲い掛かる刃。
そして、地下から巻き上げられる鎖で次々と現れる魔族軍の屈強な兵達。
(ふふふ、終わりの見えぬ戦闘が続けば如何に魔王様といえど体力魔力共に削られていくはず。
そして疲れ切り、動けなくなった所へワシが止めを刺す!完璧な作戦じゃ〜)
ぐふぐふと笑みを零しながらもハンドルを回す手を休めることはない。
ビネガーの計略通り、同行者のカエル男や人間の小娘達が次々と繰り出される攻撃に対応しきれずに上げられる困惑した悲鳴が、ビネガーの鼓膜を心地良く揺らす。
(人間共は複数の異なった攻撃を同時に処理出来ん下等生物。
それに魔王様も、この屋敷内では強力な魔法を危険を犯してまでは使用すまい!)
己の勝利を確信して、意気揚々とハンドルを回し続けるビネガー。
カラクリを止めぬ様に稼動し続けている為、その全身運動に息を荒げているもののその表情には余裕が感じられる。
「これでワシが正真正銘の魔王に」
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