廻る時空と黒の夢
□時空を越えて巡り合う絆
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「お前の名前はアルファド、僕の弟だよ」
それが、ジャキおにーちゃんとの出会いだった。
『時空を越えて巡り合う絆』
ぼくがものごころついた時にはもう、色々な生物のニオイがする部屋のオリの中にいた。
部屋をうごき回るヒトが言うにはぼくの姿はネコという生物とよく似ているらしい。
声を出せば「にゃあ」と音が出た。
これも、そのネコと同じらしい。
だけど、ぼくと同じ姿をしたネコという生物は、この部屋には見当たらない。
ぼくはネコという生物なのだろうか。
毎日、たくさんのヒトがあっちこっち触ったり、変なニオイの苦いごはんを食べさせたりした。
そんな日が続いたある時
ぼくのオリを囲むヒトが、口々にたくさんの言葉を話し出した。
なんだかむずかしい言葉ばかりで良く分からなかったけど「シッパイサク」という言葉が何度もきこえる。
「コレに変化はみられない、処分しろ」
その一声でぼくのオリは部屋から持ち出された。
ここは外なのだろうか。
ショブン、てどういうことなんだろう。
そんなことをぼんやりと考えていると、なんだかよく分からないけど変なニオイがした。
ぼくのオリが運ばれる先の部屋から、黒いぐるぐるしてる何かが待ちかまえているのがニオイで分かる。
アレはこわいモノだ。
ぼくの全身の毛が逆立つ。
あそこに行きたくない。
アレのいる部屋に行きたくない。
あの黒いモノはぼくを呑み込んで食べるつもりだ。
こわくて泣きさけんでも、ぼくののどからはにゃあにゃあという音しか出せず、ヒトにぼくの言葉は届かない。
こわい、こわいよ
たすけて!誰かたすけて!
━その後のことはよくおぼえていない。
あんまりにもたくさんのこわいがぼくの中でいっぱいになっていたから。
気が付くと、柔らかくてモコモコした物にくるまれてた。
そしてぼくの目の前には大きなヒトとそのヒトの半分くらいの小さなヒト?
「父上、これは何ですか?」
「猫という生き物だよ、ジャキ」
いきなり、小さなヒトの手がのびてきて、おどろいたぼくは足元のモコモコから飛び出してしまった。
「うわぁっ!?」
小さなヒトも同じようにおどろいたみたい。
‥また、あのこわい部屋に連れていかれちゃうのかな。
思い出したらまた全身の毛がぞわぞわと逆立つ。
あの黒いぐるぐるが近付いてきそうで、こわくて体がぶるぶるとふるえだした。
「急に触ろうとしたから驚いてしまったんだ」
大きなヒトの少し困ったような声に、小さなヒトも少し悲しそうな顔をする。
このヒト達はぼくをこわい所に連れていかないのかな‥?
「‥驚かせてごめんね」
ゆっくりと優しくぼくの毛皮をなでる手は少しぎこちなかったけど、とってもあたたかくて気持ちがいい。
「僕はジャキ。よろしくね」
返事の代わりに、ぼくは小さなヒトの手をぺろりとなめた。
「お前の名前はアルファド、‥僕の弟だよ」
こうしてぼくは、初めてのカゾクと名前をジャキおにーちゃんからもらった。
ジャキおにーちゃんと毎日ずーっと一緒に居て、ぼくは色々なことを覚えた。
おにーちゃんが大好きな、優しくていつもスベスベでいい匂いがするサラおねーちゃん。
チチウエとハハウエは時々しか居れないけど、一緒に居るジャキおにーちゃんは嬉しそうに笑う。
そんな毎日がとても楽しくて嬉しかった。
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