廻る時空と黒の夢
□小さき友の、面影を求めて…
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━━混乱により、人間姿のグレンを愛猫と勘違いして抱きついてしまった魔王。
更に運悪く万能薬も切らし、お守りも装備していなかった為、なかなか魔王の症状は戻らない。
「…アルファド…」
「おい魔王っ、いい加減離さねぇと本当にぶん殴るぞテメェっ!!」
グレンが右手に握り拳を作り、魔王の頭へ降り下ろそうかと構えた時
「…置いていって、すまない」
魔王の声は震えていた。
「すまない、アルファド…っ」
グレンの胸に顔を埋めている為、彼の表情をうかがうことは出来ない。
しかし、絞り出されるような声と小刻みに震える肩が、かつて幼い頃に別れた小さな友人を、彼がどう思っていたかなど容易に想像がつく。
(…こいつ、泣いてんのか?)
「…アルファドぉ…」
「チッ」
振り上げていた右手から力を抜き、かつての宿敵であり、一時的にでも仲間として歩む魔王の、あまりにも弱々しい姿にグレンは深く息を吐いた。
「仕方ねぇ、…もう少しだけ我慢してやるよ」
“小さき友の、面影を求めて…”
━その後、皆から猫を見かける度に声を掛けられるようになった魔王。
その理由を知らぬのは本人ばかり━
END
→アトガキ