Long Dream

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部屋での名無しさんの定位置はベッドの上だった。
退屈そうに寝転がり、そのまま昼寝をしてしまったりと割と自由に過ごしていた。

そして今現在、ベッドの上で窓の外を不満そうな顔で眺めていた。


「……」


今にも怒り出しそうな様子だったが別にサソリと喧嘩したわけではなかった。


「……ちっ、いつまで外を見てやがる」


「雨がやむまで」


「この雨は長引くぞ」


「〜っ!だって!」


悔しそうに枕を叩く名無しさん。


だって腹立つ!


昨日のことを思い出し、名無しさんは怒りを抑えられないのか枕に八つ当たりを続けていた。





―――




「1日俺に付き合え」


サソリの言葉にぽかんと呆ける名無しさん。


「どういうこと?」


「……ちっ」


察しが悪いと小さな声で文句を言うサソリ。
その言葉に名無しさんは首を傾げる。


「……?」


「……桜の季節だからな。散歩でも行こうかと……ついてくるなら勝手についてこい」


ぶっきらぼうな言葉だったが名無しさんはようやくサソリの言葉の意図を理解した。


「お花見だね!」


一瞬で表情を明るくした名無しさんにサソリは満足そうに口元を緩めた。


「いつ?いつ連れて行ってくれる?」


普段の様子からは想像できないほどはしゃいでいる名無しさん。


「ちょうど任務もキリがついたからな……明日にするか」


「わ、わかった!!」


すっかり興奮した様子の名無しさんにサソリは思わず吹き出しそうになったがなんとか平静を保った。


「ならもう寝ろ。また明日な」


「うん!おやすみ!」



―――



「……雨ですよ」


名無しさんは悲しげに呟いた。
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