短編
□チョコレート
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一つ
二つ
三つ
まだある……
たくさんのチョコを抱えている私の好きな人。
何だか嬉しそうにしている気がして悔しくなる。
「よぉ。名無しさん」
席に座って一人ぼーっとしている私を両手いっぱいにチョコを抱えたまま見るサソリくん。
「……おはよ」
私はぷいっと顔を背け、呟くように挨拶をする。
サソリくんはそのまま自分の席へ行ってしまった。
会話は終了してしまったのだ。
顔を背けたのは自分なのに私はしょんぼりしていた。
だってあれ以上顔を見てたら顔が赤くなりそうだったんだもん……
仕方がないじゃん……
どれだけ自分に言い訳をしてももう少し話せば良かったという後悔が消えることはなかった。
でも今日、私はある決意をしていた。
もちろんバレンタインデーにする決意なんて決まっている。
サソリくんにチョコを渡したい
決意というより願望に近いのは考えないことにしよう……