長編
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「納得いかないっ!」
サソリの部屋で怒りを露わにしているのは今日から暁で生活することが決まった名無しさん。
「仕方ないだろ。わがまま言ってんじゃねぇ」
「わがままって……そういう問題じゃない!」
「しつこいぞ。今はメンテナンス中だ。黙ってろ」
サソリの言葉に怯む名無しさん。それでも小さく抵抗の意志を見せる。
「……だって、サソリと私が相部屋なんておかしいよ」
ポツリと名無しさんが漏らした言葉にサソリはメンテナンスを中断して振り返る。
「あ?下僕が主人の傍にいることのどこがおかしい」
「あのね!私は一応女の子なんですよ!」
「それがどうした」
サソリの平然とした態度に名無しさんは唖然とする。
「……サソリがこんなにデリカシーのない人だと思わなかった」
「別に何も困らねえぞ」
サソリの一言に名無しさんはサソリを睨みつけ、ため息をつく。
「なんで分かってくれないんだろう……」
「ちっ。女ってのは面倒だな」
「……もういいよ」
サソリがあまりにも平然としているので名無しさんはだんだん騒いでいる自分が馬鹿らしくなってきた。
大人しくなった名無しさんを見てサソリはメンテナンスを再開した。