長編

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リビングに行くとすでに昼食を食べているイタチがいた。


「おや、名無しさんさん。お疲れ様でした」


名無しさんに気付いた鬼鮫は食事を盛る。


「……悲鳴が聞こえたが何かあったのか?」


イタチは眉をひそめる。

悲鳴を聞いても駆けつけないのがいやに暁らしいところではあるが。


「いや、ちょっと飛段に驚いて……」


苦笑しながら言う名無しさんにイタチは納得する。


「食事前にナンセンスだな」


「そうだ!これから食事なのに!うっ」


何だか気持ち悪いかも。

「じゃあ、飛段は後から食べるのですね。角都さんと名無しさんさんには今出しますから少々お待ちを」


料理を盛る鬼鮫を見て、名無しさんは慌ててお手伝いに行った。

そして角都に料理を出した時、名無しさんは一つの疑問が浮かんだ。



……どうやって食べるんだろう?


そう、角都はマスクをしている。

これはカカシ先生並みのレアシーンが見えるかもしれない……。


名無しさんは席に着いても角都を凝視する。


「名無しさん、どうした。食べないのか?」


イタチが心配そうに話しかけてきた。


「え?あ、あははは。食べる食べる!うん。美味しい!」


名無しさんの妙な反応に疑問を持ちながらも具合が悪いわけではないようなのでイタチは安心する。


名無しさんは急いで視線を角都に向ける。


「あっ!」


すでに副菜を一品食べ終わっていた。


「どうかしましたか?」


鬼鮫は突然叫んだ名無しさんを不思議そうに見つめる。


「な、何でもない」


ひたすら角都を凝視する名無しさん。


今度こそ……っ!


視線を角都から逸らさない名無しさん。もはや全神経を角都に向けていると言っても過言ではなかった。


角都が箸を動かす。


おそらく食べ物を口に運ぼうとしているだろう。


その瞬間


「痛ああああっ!」


ゴンッと物凄い音がした。


「てめぇは何してんだ」

涙目どころか半泣きの名無しさんの後ろから聞き慣れた不機嫌ボイスが聞こえた。


「い、痛い……」


頭を抱える名無しさん。


「あ?」


「だ、旦那。今凄い音がしたぞ。うん」


「当たり前だ。殴ったんだからな」


どうやら芸術コンビが帰ってきたようだ。



「っ!お、女の子を殴るなんて酷すぎる!鬼っ!」


よほど痛かったのか、いつも以上に怒る名無しさん。


「あ?お前がっ!……」


怒っていたサソリが突然黙り込んだ。


「何さ!私が何したの!」


痛みのせいか強気な名無しさん。


「……」


不機嫌な顔のまま黙り込むサソリ。
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