長編
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次に名無しさんが訪れたのは飛段の部屋だった。
「……なんか生臭い」
ドアを開けるのに一瞬躊躇したが名無しさんは意を決してドアを開けた。
「わあああああああっ!?」
その瞬間、名無しさんが悲鳴をあげた。
「なんだよ。うるせぇな。気が散るじゃねぇか。ジャシン様にお祈り中だっての」
飛段のことは知っていたがそれとこれとは話が別。大量の血と棒が突き刺さった飛段を見て名無しさんは目眩がした。
「……飛段。ごはんだよ?」
「あ?わりぃな。まだ行けそうにねぇ」
「だ、だろうね……。じゃあ」
名無しさんは急いでドアを閉めて角都の部屋へ走った。
普段の運動不足が祟ったのか息切れがする。
いや、それだけじゃない気もするが……
「角都?ごはん出来たよ」
何となく角都が怖い名無しさんはドア越しで話す。
するとすぐにドアが開き、角都が出てきた。
「……なんだ?」
どうやら無意識の内にガン見していたらしい名無しさんは角都に不審そうな目を向けられた。
「い、いや。ちょっとさっきショッキングなことがあっただけで」
「飛段か。あいつはまたくだらない儀式やらに時間をかけて……」
普段の不満を漏らすように角都は話す。
デイダラといい、暁のメンバーは自分の相方に不満が溜まるみたいだ。
まぁ、デイダラより口数が少ない分、不満を溜め込んでそうで怖いけど……。
「お前はサソリの任務について行かないのか?」
突然話を振られた名無しさんは驚きながらわたわたと答える。
「え、あの……サソリが駄目だって……」
そう、実は初任務以来、名無しさんは任務に行くことをサソリに禁止されていた。
「……意外と過保護なのだな」
ぽつりと角都は感心するように呟く。
「え?……ってちょっと待って!」
名無しさんを無視して角都はスタスタとリビングへと向かっていった。