長編
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夜が更けていく。
「ん?おい、あれ」
門番の二人の忍者は木の下で倒れている名無しさんを見つけた。
体を揺さぶるが名無しさんは目を覚まさない。
「おい、大丈夫か!」
「しっかりしろ!」
急いで倒れている名無しさんを担ぎ、病院へと連れて行った。
――リ
「……ん」
うっすらと目を開けると天井が見えた。
「目が覚めた?」
横から女の人の声がする。
「ここは……」
「病院よ。貴女、木の下で倒れていたのよ」
「木の下……」
「そうよ。ところで貴女、名前は?どこに住んでいるの?」
「え?私は……」
名無しさんの様子に看護婦は驚いた顔をして問いかける。
「……もしかして分からないの?」
「……はい」
ぼーっとした顔で力なく答える名無しさんを見て看護婦は足早にどこかへ行ってしまった。
「……痛い。胸が……痛い」
名無しさんは窓の外に咲いている赤い花を見つめながら小さく呟いた。