長編

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部屋に戻った二人にはしばらく沈黙が続いた。

名無しさんは俯いて、サソリは名無しさんに背を向けていた。




せっかくサソリと会えたのにこれで当分会えなくなるのか……


「……サソリ」


もうすでに名無しさんの目には涙が溜まっていた。


「……」


「……また会えるもんね」


「ああ、そうだな」


サソリは無言で小さな瓶を名無しさんに渡した。


「これを飲めば……」


記憶がなくなる――


「……私、初任務ちゃんとこなしてみせるからね!」


名無しさんは目に涙を溜めたまま笑顔で宣言する。


「……っ!」


「じゃあ、行ってきます」

その言葉とともに名無しさんは薬を飲み干し、バタリとその場で倒れた。


サソリは倒れた名無しさんを抱きかかえ木の葉へ向かった。




サソリ……気づいてた?さっき初めて私のこと名前で呼んだんだよ?


……嬉しかった


この気持ち忘れたくないよ……







サソリが木の葉に到着した時、すでに夕方になっていた。


「……約束」


サソリは木の葉の入り口を見つめながら名無しさんとのある会話を思い出した。




――今度は俺が連れて行ってやるよ



――あ、うん




「これはさすがにカウントされねぇよな」


サソリは悲しそうに笑う。


そして胸がチクリと痛んだ気がした。


「この感覚は……なんだ?」


以前感じた感覚とは違うものに戸惑いながらもサソリは名無しさんを木の葉入り口近くの木の下に寝かせてアジトへと戻っていった。
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