長編
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「っなんで……」
「玩具のくせに持ち主の許可なくどっか行ってんじゃねぇよ」
不機嫌な顔をしたサソリが名無しさんの頭を掴んでいた。
サソリ……
ん?
今、私何飲んだの?
「サ、サソリ……。今、何をっ」
顔が真っ青になる名無しさん。
サソリは名無しさんの頭から手を離して名無しさんの目の前にしゃがんだ。
え!?
か、顔が……近いっ!
「気分はどうだ?」
「え?」
そういえば体が苦しくなるどころかなんか落ち着いたかも。
もしかして今の毒じゃないの?
「なんだか落ち着いた……」
「そうか。これには精神を安定させる効果があるようだな」
「え?」
「実験報告ごくろう。帰るぞ」
……え?
偶然なの?
私のためとかじゃなくて?
名無しさんはうなだれる。
サソリは立ち上がり、スタスタと歩き出す。
「おい、泣き虫。行くぞ」
なんかもう逃げられないみたいです。
「……泣き虫じゃないし」
名無しさんは小さく呟きながら立ち上がり、サソリの後をついて行った。