長編
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「名無しさん!」
名無しさんに駆け寄る女の子。その後ろには男の子が二人いた。
松葉杖をついているやたら顔の濃い子とやたらえらそうな子。
「……どちら様ですか?」
その言葉に女の子は驚いた顔をした。
「本当に忘れてるのね。私の名前はテンテン。貴女の名前は名無しさん」
「……名無しさん」
それが私の名前……
「テンテン、そろそろ行くぞ」
「そうです。そろそろ行かないとガイ先生が待っていますよ」
濃い顔の人は悲しそうに笑う。
「わかってるって」
テンテンは名無しさんにまた来るからねとだけ告げて病院を後にした。
一人になった名無しさんは何故か心細くなってきた。
「……」
……テンテンまだいるかな?
名無しさんは病院を抜け出した。