長編

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アジトに戻ると鬼鮫たちが駆け寄ってきた。


ずっと名無しさんを探していたらしい。


名無しさんをソファに寝かせたサソリは任務中に名無しさんと会ったことを説明した。
といってもサソリは名無しさんがどうしてあんなに取り乱していたのかはわかっていなかった。


「サソリさん……顔についている血はふいたほうがいい。また名無しさんがパニックになりかねないです」


「どういうことだ?」


顔の血をふきながらサソリは問いかける。


「……人が死ぬのが怖い人もいるんですよ」


イタチは昔、自分が犯した罪のせいで泣いている弟の姿を思い出していた。


「とにかく名無しさんさんに話を聞くしかありませんね」


メンバーは解散してサソリは名無しさんを部屋のベッドに寝かせた。


「……何度俺はお前が目覚めるのを待つんだろうな」


名無しさんの頭を撫でながら一人呟くサソリ。


すると名無しさんの目がゆっくりと開いていく。

「名無しさん!?」


「……」


サソリの問いかけに名無しさんの顔色が変わる。


名無しさんの頭を撫でていたサソリの手は名無しさんによって振り払われた。


「……!?」


名無しさんは涙を流しながら口をパクパクさせている。


「……名無しさん?お前声が……」


名無しさんの様子からサソリは名無しさんの体の異常を感じた。


そして振り払われた自分の手を見つめる。


「どうしたっていうんだ?」


動揺しているサソリの顔とは違い、名無しさんの目は近づくなと訴えていた。


すると部屋にイタチが入ってきた。


「サソリさん、名無しさんの様子は……どうしたんですか?」


「名無しさんの様子がおかしい」


二人の緊迫した空気を感じたイタチは困惑する。


名無しさんの体は震えていた。


そして口をパクパクさせて何かを訴えている。


イタチとサソリは名無しさんの口の動きを読む。


そして気づいた。


名無しさんはこう言っていた。



コ・ワ・イ




と。
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