02/07の日記

08:24
お知らせ&ネタバレ2
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はい、お久しぶりです。

作者です。



毎日12時前には寝てます。新婚だった時さえ12時超えが当たり前だったのに、何でこんなに疲れてるんだろう。

そう思うくらい、毎日時間に追われて疲れ果ててます。



どんだけ体力無いんだよ(白目)

てか要領悪いんだよなぁ…



そんな作者の今一番欲しい物は、迷わず『時間』ですね。


時は金なり、昔の偉人はマジで偉大と思います。ホントその通りだわ。


若い時に色々やっときゃ良かったわ。そうすりゃもうちょっと自分の時間が確保出来たかもしれんのに…

と、最近良く思います。




後悔後に立たずですね(本当にな)



あー、勉強してぇ。資格取りてぇ。ゲームやりてぇ。DBDが今イベント中だからスキン集めたいよー。マイクラやりたいよー。



そんな作者が合間を縫って、ちまちまとメモしていたあらすじをまた此処に載せておきますね。

ちなみにラブセンのせんみさ編です。


気になる方は閲覧下さい。

ただしネタバレが嫌な方は見ない方が良いかもです。


そしてただひたすら胸糞な展開が続くので、読んだ後の苦情は受け付けません。
あくまで自己責任でお願いします。



大丈夫な方はどうぞ。






↓此処から唐突に物語が始まります。




後継を作らなくては離縁されるという強迫観念に駆られた前夜沙織(旧姓は財前沙織)が元凶となり、閃一と美里は決定的に決別する羽目となった。

そもそも事の発端は、沙織の両親と沙織自身が従姉妹であり借金のカタとして美里を利用しようと目をつけたからである。
彼女は財前家の分家の人間だが、本家である美里の両親が多額の借金を背負っていた為、尻拭いをさせられていた。だが富み栄えていた分家の財産をもってしても借金は全額返済出来ず、分家の説得もあり美里の両親は泣く泣く娘の嫁入り(用は借金のカタとして売り飛ばし)を試みる。
しかし妹と愛し合っている(と少なくとも美里自身は思っていた)美里は、突然降って湧いて出たこの婚約話に戸惑いを隠せず、相当に悩まされた。それでも、このままでは重度のシスコンに加え性格に超難有りの妹が独り立ち出来ないのでは?と心配になったので、美里は渋々お見合いを承諾する事に(愛し合っているが故に、美里は縁と添い遂げる心算であった。しかし縁は完全な内弁慶で、気に入らない事があると直ぐに癇癪を起こし家庭内暴力を振るう事も時折あった。加えて社会人としての自覚も無ければ全く自立心も無かったので当然職場ではトラブルが絶えず、平気でデリカシーの無い言葉を口にしたり、相手に平然と嫌身を口にしたり自分が絶対に正しいと思っている為に絶対非を認めず相手を容赦無く責める等、人としてかなり問題のある人物だった。なので職場の人間からも無視されており、縁の将来を真剣に考えた美里は別離する事が最善なのだと答えを導き出した故の結論だった)
相手は本堂家の次男であり、本堂病院の内科医兼診療部部長の裕作だった。ちなみに長男の裕造は若くして外科医兼副院長に選ばれた超エリートで、彼こそが本堂病院の次期後継者で間違い無いと実しやかに囁かれていた。
けれど裕造本人は結婚に否定的で、病院は受け継ぐが子は持たず裕作の子にいずれ譲ると約束していた。

だからこそ、美里の見合い相手として裕作が選ばれたのだが、何処から縁談の件を盗み聞きしたのか、姉の裏切り(見合いした事が縁にとっては裏切りに等しかった)を知った縁は姉に対する長年の劣等感や妬みに駆られ、陰謀を企てる(当日直前になって裕造が同行すると知り、両親に頼み込んで無理矢理裕造との見合いの席を作ろうと画策する。そして姉に内密で現場を訪れるが、運命の悪戯で遅刻した裕作と偶然鉢合わせ、裕作に見初められた事を良い事に有る事無い事実姉についての悪口を吹き込み、自分が有利になる様、事を運んだ)によって見合いは破談。しかし同じく付き添いであった筈の裕造から結婚を迫られ、裕作からは逆に厄介者払いされて苦境に立たされる羽目に。

更に妹から本音を聞かされ(本当は姉ばかりがちやはやされてずっとずっと羨ましかった、でも私の方が可愛いし私の方が裕作に相応しい。アンタなんか大嫌いよ、と)失意の中、自暴自棄になった美里は裕造の元へ嫁ぐ事に(本当は結婚しても縁と親族となるのが嫌で嫌で堪らなかったが裕造の脅しと分家であり前屋家に嫁いだ結里の圧力、裕作夫婦は別館で暮らすとの事なので泣く泣く承知するしか無かった。ちなみに沙織が幼馴染である前屋家に嫁いでいたからこそ、勢力拡大と乗っ取りを企んでいた分家は執拗に嫁ぎ先を本堂家にと強要していた)

そんな成り行き故、当然ながら美里は肩身の狭い思いをして暮らす羽目に。加えて夫となった裕造はモラハラ気質でいかんせん近寄り難い。結局マトモなコミュニケーションが取れないまま二人はすれ違って行く事に。

だが、暗い暗いまるでトンネルの中にいるかの様な日常の中にもやがて大きな変化が訪れる。それは美里同様、多額の借金を背負わされた人間との接触がもたらした必然だった。

彼の名は前屋閃一。前屋家の次男だが一部では実の所後継である兄より優秀であった為、兄からは疎まれていると専らの噂で持ちきりだった。
だが兄の友人にして自身の友人でもあった男に騙され、裏切られたせいで多額の借金を背負う羽目となったらしく(名を羽柴という。閃一に恋情を抱き借金のカタとして閃一自身を所望するが前屋家の恥になるという理由で一輝が肩代わりして借金を返済する。ちなみに羽柴はそれを元手に資産家となるが閃一を忘れられず変態の道を突き進んで行く)今は兄である男の奴隷同然として顎でこき使われている様だった。
そんな、一見甲斐性無しに見える実にお人好しな彼は、噂通り兄を想う故に実は出来の悪い弟を演じていただけであった。しかし兄と両親と一部の人間だけはその事に気付いており、それを快く思わなかった兄は弟である男を目の敵にしていた為、まさに絶好の好機だと言わんばかりに一輝は閃一を苦しめ追い詰めていたのだ。方法はまさに非人間的、寝食を奪われた閃一は昼夜問わず働かされ、心身共にやつれ果てていった。

その矢先、美里と彼は出逢う。信じていた人間から突然の裏切られ、唯一の兄からは執拗な嫌がらせを受ける。絶望しか無い閃一にとって、美里はただ一つの光になった。
最初こそ無愛想であったが、同じ部類の人間だったからなのだろうか。何故か彼女が気になった閃一は、偶然屋敷外を散歩していた美里と出会(でくわ)し、二人は恋に落ちる。
きっかけは本当に些細な物で、珍しく休みが取れた裕造は美里を連れて正式に前屋家へと挨拶に訪れようとしていた。その際、強風で美里の麦藁帽子が飛ばされてしまい両家を挟む大木の枝に引っかかってしまう。
その日は日差しが強く、数少ない私物であった事から美里は名残り惜しむ様に麦藁帽子を見つめていた。夫である裕造はまた新しい麦藁帽子を買ってやるからと言い残し、美里を置いてさっさと前屋家に向かって行ったが、その麦藁帽子を気に入っていた美里は諦め切れずに暫くその場で立ち尽くしていた。
そんな時いつもその大木の下で羽休めをしていた閃一が異変に気付き、美里が断るより早く大木に登り麦藁帽子を取り戻してくれたのだ。
だが、突然見知らぬ人間に話し掛けられた美里は戸惑いを隠し切れず、夫に呼ばれた事も相まってロクに礼も述べられず慌ててその場を立ち去ってしまう。
そうして両家の挨拶も無事に済み、夫からの小言も程々で終わった事に安堵しながらも、美里は先程出会った彼の事がどうしても気になり悶々とした日々を過ごしていた。
つい咄嗟の事で対応しきれず、失礼な態度を取ってしまった事が悔やまれてならない。
ぶっきらぼうな態度とは裏腹な、彼の素朴な優しさに心を打たれた美里は、何とかしてあの時の礼を伝えたいと考えていたのだ。他人から無条件に優しくされたのが初めてであった故、初対面であったにも関わらず他意の無い純然な彼の善意が美里は素直に嬉しかった。同時に彼が一体何者なのか、彼の事を知りたいとさえ考え始める様になり、ある日居ても立っても居られなくなった彼女は誰にも知られずひっそりと閃一に会いに行く。あの大木の下にまた彼が居ると信じて。
初めての勇気を振り絞って自ら行動した美里は後日閃一に改めて礼を述べる事に成功する。

そこから急速に二人の仲は深まり、友人以上恋人未満の関係となっていく。

それを屋敷のメイドの噂経由で聞きつけた裕造は、不快を隠し切れずに元々麻酔の新薬として使うはずであった、新種であり悪魔の花と界隈で噂される白銀の百合『アルテミス』を材料とし、飲めばたちまち色欲に溺れ狂い落ちる媚薬の試作品『ヴィーナス』を創り出す事に成功させる。

早速美里に内緒で投薬を始める裕造。

一方、前屋家に嫁いだ沙織は子宝に恵まれず内心かなり焦っていた。
元々夫と不仲の彼女は夜の回数も数える程だったので、最初こそ悠長に構えていたが年齢も年齢という事もあり、嫌々ながらも度々夫に迫っていた(沙織は美里よりも10歳程歳が違う)
また一輝自身も気乗りはしなかったが由緒正しい血筋を引く跡取りが必要である事は重々承知だったので、渋々といえ夜の求めには何度か応じていた(没落していたとはいえ財前家の地位や人脈、権力は非常に魅力的であり、実質前屋家が後の大輝世代で六財閥五名家の中でも飛び抜けているのは財前家との政略結婚による合併吸収の賜物と言われている)
けれどタイミングが悪いのか相性が悪いのかなかなか授かる気配は無く(結婚の際に念の為不妊かどうか調べており、この時点では二人共問題は無かった)かと言って愚図愚図していては、いずれ愛人が孕んでしまい自分の地位を脅かすのではないかと恐怖に駆られた彼女は閃一に目を付ける。
兄弟である彼ならば最悪誤魔化しが効くとでも考えたのだろう。こうして、愚かな女の浅知恵から悲劇は始まったのだ。

沙織は上手く一輝を丸め込み、抱き合った数日後に夫を海外へと追いやる。そして彼が不在の時を狙って、自分の誕生日祝いにかこつけて閃一を招待し無理矢理酒を勧めたのだ。
元々酒が苦手な閃一は断り続けたが、沙織の強引かつ卑劣な策略により泥酔してしまう。しかも沙織は保険として裕造からこっそり盗んだ媚薬を混入させていた。

ここまでは上手く漕ぎ着けたが、パーティーの主催であった沙織は抜け出す事がついぞ出来ず、成り行きとはいえ閃一を介抱する事になった美里が代わりに抱かれてしまう事に。

たった一度の過ち。ずっと欲しかった言葉を前に、強烈な媚薬の効果に抗い続けた美里は愛する男の誘惑に耐える事が出来ずあっさり陥落させられる。
だが沙織の狙い通り、泥酔した閃一は運良く死ななかったものの昨晩の記憶を全て失っていた。

ーーーもし出来てしまったら、産めばいい。

彼の言葉を信じた美里であったが、ハラハラしながらもたった一度くらいでそう簡単に妊娠しないだろうと内心では他人事の様にも思っていた。だからバチが当たったのだろうか。アフターピルを飲もうと一瞬迷ったが、裕造の監視が厳しい事(媚薬の効果に負けた時に何時でも対処出来る様にと監視役を付けていた。尚、パーティーの際は裕造が直前まで美里と共に居たから監視役を外していたのと、監視役が気付いた時には既に二人の姿が無かった)行為が終わった後に閃一は幼少期に高熱を患い妊娠しにくい体質であるとカミングアウトされた事(兄を溺愛する母と、そんな母を溺愛する父と、自分を憎んでいる兄に冷遇されていた彼はたまたま美里に介抱されたその日に、高熱でうなされながら母の名を呼んだにも関わらず見捨てられてしまった辛い過去を思い出し、ふと零したのだ)加えて自分も元々生理不順で最近は特に貧血やらで体調が悪い為、妊娠する確率は極めて低いと思っていた。

にも関わらず、媚薬の副作用で美里はあっさり妊娠してしまったのだ。
妊娠を望んでいた訳では無かったのにまさかこのタイミングで。

そうとは知らず、絶好のタイミングを逃した沙織は悔しがるが、更なる悲報が彼女に襲いかかる。
それは、万が一の可能性を疑って試みた健康診断及び不妊症の検査結果だ。彼女の予想に反して、診断結果は子宮腺筋症とそれに伴う卵巣内のチョコレート嚢胞。更に病気の進行がかなり早い為に子宮及び卵巣を摘出しなければならず(子宮腺筋症による激しい痛みや貧血を改善する為と卵巣癌に発展するリスクがある為)年齢も美里達より上であったという事もあり、何とか手術を回避しようと拒絶する沙織の抵抗も虚しく手術は秘密裏に行われる事に。

こうして子を授かる前に妊娠する手立てすら失ってしまった沙織は途端に何時離縁されないかと更なる強迫観念に悩まされる羽目に。
幸い、夫である一輝は妻の動向にすら全く興味が無かった為バレなかったが、体裁を考えて兄の結婚を先にと周りが配慮を促したにも関わらず無視をしてデキ婚にこぎつけた裕作夫婦以上に惨めな気持ちにさせられた。
それでも親戚一同に早計だの恥知らずだの思慮が浅いだのと散々罵られた縁はとうとう本堂家の人間として正式に認められる事無く、半ば亡き者扱いにされてしまい。裕作自身憤りを感じるものの、一族内では発言権が無いに等しい彼ではどうする事も出来なかったのである。
そんな、夫の頼りなさに幻滅する所か非モテだった故に拗らせていた縁は、自分を溺愛してくれる夫に陶酔していた。だから、全ての恨み辛みはいつも自分より優れ自分より上を行く姉へと向けられたのだ。

まさに逆恨み。けれど自覚すら無い縁はネチネチと毎日姉に対し自慢や嫌味を放ってストレスを解消していた。まるで自分より何もかも優れていた姉への劣等感を払拭するかの様に。
「お姉ちゃんより私の方が可愛いって、裕作さんが言ってた」「まだ子供出来ないんだね、お姉ちゃんに魅力が無いから裕造さんもその気になれないんじゃない?」「お姉ちゃん可哀想、でもしょうがないよね、縁は幸せになれて良かったぁ〜」と、いちいち幸せ自慢をしてくる縁を前にしても、大人で落ち着きのある美里は愛想笑いをするだけで敢えて相手にしなかった。
下手な事を言えば裕造の顔に泥を塗る事になる。ただでさえ、浅はかな妹夫婦のせいで本堂家内の美里と縁の立場は決して良いとは言えなかった。
それどころか、学も無い取り柄も無いおまけに容姿も決して優れているとは言えない性格の悪い妹の本性が徐々に浮き彫りになるにつれて、本人は勿論の事、姉である美里の評価にも直結してますます立場が悪くなる始末。
妹の為を思って一大決心し別離を選んだというに、よもや自分の選択は間違っていたのでは無いかとすら思う程、当人である縁は常に敵意剥き出しで張り合ってきていた(ただし不幸中の幸いと言うべきか、裕造の前では言わず二人きりになった際にのみ言っていた模様。理由は言わずもがな、美里を盲目的に愛していた裕造に睨まれるのを恐れたから)

当然先に妊娠した事が余程嬉しかったので、事ある毎に妊婦アピールをしていたのだが、楽をする為だけに専業主婦希望でペット感覚で子供を欲しがる縁と異なり、美里自身は子供を作る事に否定的であった(夫である裕造自身も子供に興味が無く、寧ろ煩わしいとさえ思っていたのでその点だけは美里と合致していた。だからといって美里を抱きたい気持ちが無い訳では無く、機会を伺って言い寄るも妻である女に頑なに拒否された挙句、院長であり多忙な身の上故に初夜以降ゆっくり逢う事すらままならず、最終的には美里に先立たれてしまう)元々自分に自信が無く、閃一同様不遇な幼少期を過ごして来た美里にとって、子を産み育てる事は言わば負の連鎖に等しく思えたからだ。
故に今までならば縁の自慢や嫌味も今まで通り軽く受け流せたのだろうが、妊娠してしまった今は違う。まだ産みたいのかどうかすら分からない段階、即ち実感が無い状態。けれど妊娠前と違い率先して下ろす気にはなれなかった。
彼女はそこでようやく気付かされる、愛する男の子を孕むという事がこんなにも特別な事なのかと。決して裕造相手では持ち得なかったであろう感情。

それは確実な心境の変化だった。

だからこそ迷った。

幸いゴタゴタが両家で起きていた為、美里と閃一の一件も浮き彫りになる事は無く、それどころか閃一が記憶を失っていた為にまさしく有耶無耶になろうとしていたからこその迷い。
問い正そうにも事が事だけになかなか話しを切り出せない美里は、彼が記憶を失っている事に薄々感づいていた事もあり決断を迫られていた。

このまま中絶し、何事も無かった事にしてしまうか、或いは閃一そして裕造の両者に事実をカミングアウトした後に二人の反応を見てから決断を下すか。冷静に考えれば前者を選ぶ事こそが最善の様に思えた。少なくとも閃一及び裕造の立場を尊重するならば。

しかし美里も一人の人間だ。そう簡単に割り切れる訳も無く、彼女は心密かに強く願っていた、自分はどんなに苦労しようとも辛い目に遭おうとも構わない、ただこの子を諦めるなんて出来ない、出来る訳が無い、離れたくなど無いと。

それは美里が初めて抱いた母性本能であった。

そうして彼女は一つの決断を下す。例え罵られようとも恨まれようとも構わない、偏に我が子を守る為、彼女は何の見返りも求めずに生きる事を決断したのだ。
それは、正式に夫と離婚したのち閃一とも決別したった一人で生きるという選択だった。勿論、遺伝子上の父親である閃一に何も知らせないまま産むのは卑怯だと分かっていた。彼にも真実を知る権利はある、当事者なのだから当然の権利だ。それでも最終的に美里が閃一へ真実を告げる事は無かった。

きっと裕造が知れば烈火の如く怒るだろう、当然閃一自身も今度こそ前屋家から勘当され追い出されてしまうかもしれない。それもある。だからこそ、誰かに問われるまで彼女は貝の様に口を噤んでいたのだが、何よりも美里をそうさせたのは、僅かとはいえあの晩の告白を信じて良いのだろうかと疑念を抱いていたからだ。

本音を言えばあの晩彼が口にした言葉を信じたかった、けれど口から出た言葉全てを鵜呑みにするのは幾ら何でも軽率だろう。美里自身が元々自己肯定感が低く、自分に対する閃一の気持ちを測りかねていたが故の危惧。
仮に万が一でも閃一が自分を想っていてくれたとしても、閃一が自分と腹の子の為に全てを捨てて一緒に逃げてくれる保証などどこにも無いから。閃一を信じたい一方で、裕造や縁の時の様に否定されたり拒絶されたり裏切られたりして傷付くばかりの日々はもう耐えられないと思っていたのもまた偽りない美里の本音だった。
それでもこの世でたった一人の、自分以上に大切な愛する男の子を下ろすなんて到底出来なかった。周りは勿論の事、例え閃一本人に反対されようとも授かったこの奇跡だけは何としても守りたかったのだ。
だから、美里は愛する男の考えを尊重するよりも自分の想いを優先したのだ。誰に反対されようとも構わない、この子と二人で生きていく、ただ幸せになりたいその一心で、もう決めた事なのだからと。

そうして、腹を括った美里が内密に産婦人科へ出かけた矢先、出産を終えて入れ違いに屋敷へ戻って来た縁は偶然目にしてはいけない物を目にする。
名目上は婦人科系の病気で診察して来た筈の姉の鞄の中には、何故か真新しい母子手帳が。裕造に知られぬ様にと妊娠検査薬を鞄に入れて持ち出し、外で処分した美里であったが、まさか妹が勝手に自室に入って来るとは思わず油断していた。そこで目にしてはならない物を目にしてしまった縁はカッとなってある計画を思いつく。

自分より良い思いばかりしている姉が憎くて憎くて堪まらない、折角姉より先に妊娠して安泰だと思っていたのに出産したらしたで後継は裕造だから、裕造に子が生まれたらいよいよ何の為に嫁いだのか分からなくなりそうだったから。
夫である裕作に望まれて愛されて満たされている筈なのに、途方も無い姉への劣等感に苛まれていた縁はとうとう踏み越えてはならない領域を踏み越えしまう。

それは裕造諸共美里を葬ろうという、悪魔の様な計画だった。邪魔な姉夫婦さえ消えれば全ての遺産や権力が自分達に転がり込んでくる、ついでに親戚達の羨望や尊敬の念も集まって来るとと踏んで。
本気でそんな事を考えていた縁は屋敷の専属ハイヤーの一人を金で買収して裕造のマイカーに細工を施す様命令する。勿論、彼女は裕造の車種すら知らない、姉に嫌味ばかり言う縁を毛嫌いしていた裕造が悉く無視を決め込んでいた為、面識が全く無いのだ。それが仇となるとも知らずに。

偶然か、はたまた必然だったのか。その日に限って裕作が自車を車検に出した為、裕作と縁は因果応報を受ける事となる。それは裕作死亡、縁意識不明の重体と取り返しの無い因果応報であった。唯一、不幸中の幸いというべきか産まれたばかりの赤ん坊だけは足手まといだからという縁の独断的理由で屋敷内の乳母が預かっていた。大方縁の提案で祝いのデートにでも二人で繰り出そうとしていたのだろう、邪魔な姉夫婦の死を祝うつもりで。
けれども残された裕作の遺児は恥晒しと黙認されていた存在の為、誰が引き取るか、そもそも縁の意識は回復するのか、見通しが立たないのに子供の処遇など決めかねると言わんばかりに、この件は親戚一同の間で揉めに揉めてしまった。なので、縁の意識が回復するまではとりあえず保留という形になり、またこの一件を機に警察の調査が入り故意の事故死という事が暴かれ、ハイヤーは罪を着せられクビに、主犯の縁は意識不明ながら容疑者として扱われる事に。余談ではあるが、その時代わりに雇われたハイヤーこそ多摩川恵ことケイであった。

ちなみにこの一件で美里の立場は更に苦しいものとなる。何せ実の妹である女が自分達を殺そうとした主犯だったのだから。
裕造自身は珍しく縁を糾弾せず、それどころか美里には何の落ち度も関係も無い、これはあの女が一人で仕組んだ事だと庇ってくれた。それが思いの外嬉しかったが、きっと自分を妻にした事で親戚内の評価が下がる事を恐れた故の行為なのだろうと曲解した解釈をした為、二人の間に出来た溝が埋まる事は無かった。それが不器用な裕造なりの思い遣りとも分からずに。
だが、愛していた妹に裏切られて深く傷付いた美里は誰にも頼れず一人で泣き濡れるしか無い我が身を嘆いた。今にも力尽きてしまいそうなボロボロの彼女を支えていたのは腹に宿った愛しい我が子だけ。それだけが唯一残された縋るべき縁(よすが)であった。

一方打つ手無しとなり焦りを隠せなかった沙織だが、そういえばあの日結局閃一は媚薬の効果に打ち勝ったのかどうか気になり、動向を探る事にする。その結果、あの晩に閃一と美里が二人きりで居たという事実が浮かび上がり不信に思った沙織が更に探りを入れた所、案の定美里の様子が可笑しい事に気付き、これは何かあると踏んで執拗に美里を問い詰め、脅迫したのだ。
あの媚薬を服用して平然としていられる訳が無い、そうなる様に死のリスクすら恐れずに酒まで持ったのだから。
案の定、沙織の予想通り良心の呵責に耐えきれなくなった美里が意を決して沙織に秘密を打ち明けてくれたではないか。最初こそ驚いた沙織であったが、瞬間悪魔が彼女に囁いた。この女は使える、どうせ後戻りは出来ないのだ、ならばとことん利用する手は無いと。

こうして沙織は賭けに出る。産まれてくる、二人の罪の象徴とも言えるその子を私に引き取らせてくれないか。と無謀な交渉を美里に持ちかけたのだ。

まさに苦肉の策。だが彼女にはそれしか無かった。

しかしながら、当然美里に拒絶されてしまう。そう安安と渡せる訳が無い、何せ愛しい男との間に出来た我が子なのだから。
それでも沙織は食い下がった。計画に乗らないのならばこの事を裕造に打ち明けると。まさに脅迫以外の何物でも無い。一度は閃一に迷惑をかけたく無いと迷った美里だが、ならばと言わんばかりに自ら裕造に打ち明けると言い出す始末。沙織に知られた事は想定外であったが、元々夫婦関係が破綻しており、妊娠が裕造に知られれば真相を追求される事は明白だったのでいつか彼に打ち明けねばと覚悟していたのだろう。
当てが外れて内心ではしまった!と地団駄を踏む沙織であったが、ズル賢い彼女は美里よりも先回りして裕造本人に交渉を持ちかける事に。自己評価の低い美里は(モラハラ気質な裕造の態度も相待って)勝手に自分は嫌われているのだと誤解して居たが、周りから見れば裕造が美里に惚れているのは一目瞭然であった。だからこそ、沙織は裕造の気持ちを利用して美里から我が子を無理矢理引き剥がそうと試みたのだ。自分が前屋家の遺産を全て手に入れる為にも、より強固で確かな道具が必要だと、そう思って。

数日後、沙織の思惑通りまんまと口車に乗せられた裕造は立会人として沙織を同席させ、事実確認を試みる。
追い詰められた美里であったが愛する男を守る為意地でも口を割らず黙秘を押し通し、挙句愛していないから離縁して欲しいと裕造相手に嘆願する。

そこで始めて自分達がすれ違い、もう取り返しのつかない所にまで来てしまった事に今更ながら気づかされる裕造であったが、そんな意固地な美里の態度にますます裕造は怒りを増長させてしまう。
結局、妊娠の事実は認めたものの最後まで相手が閃一であるという事だけは黙秘し続けたので、ついに堪忍袋の緒が切れた裕造はDNA鑑定に踏み切ると言い出す。そこで美里も裕造の本気を悟り、己の軽薄な行動に激しく後悔しながらもこれ以上隠し通せないのだろうと観念して認める事に。
だが、あくまで閃一は関係無い、彼を誘惑した自分に全て非がある、だから彼は許してやって欲しい、とのたまう美里に対し、失意と嫉妬で狂いそうになっていた裕造は嘲笑気味に「経緯はどうあれ、事実は明白だ。そして君達の思い通りに離縁する程私は愚かでもお人好しでも無い。今はともかく、喉元を過ぎれば君達は寄りを戻すに違いない。不倫故の離縁に有りがちな筋書きだな。だが、そんなに上手く物事が運ぶとでも思ったか?」と非難する。
それでも閃一の事と離縁は無関係であると主張する美里。閃一と結ばれる事などとうの昔に夢物語だと諦めていた彼女は必死に縋った。私の願いはこの子を守りたい、ただそれだけなのだと。
その嘘偽りの無い言葉に、僅かとはいえ心を動かされた裕造は今回の不倫を不問にする代わりにある条件を付けると言いだした。
条件は至ってシンプル、出産を認める代わりに子供の親権は手放すという、至ってシンプルだが極めて残酷な条件であった。
最初こそそんな条件は飲めないと頑なに拒否していた美里だったが、あの日の記憶が全く無い閃一に認知して貰えるとは到底思えなかったし、かと言って裕造の子として育てるのは裕造本人が拒絶している為、事実上は不可能。
話し合いをする前は一人で育てていこうと覚悟を決めていたつもりであったが、言う通りにしないなら何が何でも邪魔してやると言う裕造の気迫から、最終的には美里も屈するしか他無くなってしまう。
一方、難航したものの何とか思惑通りになった沙織は心から喜び、勝利の美酒を味わっていた。
裕造は激怒していたものの、愛する女が自殺しかねない勢いで中絶を断固拒否した為、渋々とはいえ前以て選択肢の一つとして考えていた沙織の計画に乗ってくれたからだ。
それは、切迫流産の危険があるとして沙織は入院する事となり看病兼心の支えとして親戚である美里が付き添いとして共に入院するという、でっち上げの一大計画であった。
勿論沙織は妊娠などしていない、だが美里の腹の子を沙織と一輝の子として扱う為にはこの方法しか無かったのだ。幸い美里の妊娠には裕造と沙織しか気付いておらず、裕作夫婦の不幸な事故の件もあり初産だからナーバスになっている沙織とそれを支える親戚の美里という構図は側から見ても別段不自然では無かったのだ。
また、処遇に困っていた縁の腹の子は縁自身が意識不明とはいえ容態が安定しているので、院内では世間体もあり決断を迫られていた。

このまま何時迄も放置して目を瞑っている訳にもいかない。だから表向きは弟夫婦想いな夫婦として裕造が二人の子を引き取る事にしたのだ。
それもこれも愛する美里の為。我が子を理不尽にも奪われ、心の支えを無くしてしまった彼女が今度こそ自殺しないかどうかを危ぶんでいた裕造は、妹の実子なら我が子の様に愛せるだろうと。例えあんな屑な妹だろうと、少なくとも美里は妹を愛していた様だから大丈夫だろうと。そして近い内に自分も美里と子を儲けなければ、と柄にもなく焦り始めていた。弟夫婦の子は裕造にとっても保険の意味合いが含まれていたのだ。面倒見が良くて心優しい美里が自分から離れてしまわない様に引き留める為だけの道具にしか過ぎなかったのだ。裕造にとっては。
そうでなければ、自分を殺そうとしたあんなキチガイの様な女の子供など誰が引き取るものか、とさえ思っていたのだから。口にこそ出さなかったが。

こうして沙織の狙い通りに事は順調に運ばれていったが、お腹の子供に愛着を感じ始めていた美里にとっては苦悩と葛藤の日々だった。
愛しくて堪まらない、離れたくないと心から願う程に。しかしこうも思う、父親に認知されず養育費もロクに工面出来ない自分がシングルマザーとしてこの子を育てるよりは沙織の子として生きていく方が余程幸せだろうと。
そうやって自分を無理矢理納得させた美里は、出産後自ら閃一に逢おうとはしなかった。
帝王切開で術後も暫くは養生しろと裕造に釘刺された事も理由の一つだが、やはり不倫という人の道に外れた行いをしてしまった手前、逢いたい気持ちとは裏腹に美里の足は自然と閃一から遠のいていた。

そして閃一もまた、長らく続いた過酷な労働環境と不規則かつ無体な生活を強いられていた為に以前よりもやつれてしまった。美里に逢う気力すら湧かない程に。

だから裕造も二人を責める事もせずに、約束通り不倫の件はこのまま不問にするつもりだった。

幸い、沙織の計らいで海外での長期滞在を強いられていた一輝は愛人と宜しく暮らしており、閃一の事はおざなりになっていた。
また監視役の熊田が一輝に同行した際、閃一に対して余り辛く当たらない様にと苦言を残していた為に、以前に比べれば待遇はマシになっていると言えただろう。
それでも蓄積された肉体的、精神的な疲労は凄まじく、同情した鶴巻や逢えないながらも細やかな心配りを利かせて影ながらひっそりと閃一を支え続けた美里のお陰で、閃一は何とかギリギリの所で1日1日を繋いで生きて来れたのだ。
だがそれももう限界だと悟った閃一は鬱の様な状態の中、美里にだけ連絡を取り付け死にたいのだと漏らす。
慌てた美里は閃一に早まるなと説得を試みるが、追い詰められた閃一は聞く耳を持たない。
そんな投げやりな閃一を前にとうとう堰(せき)が切れた美里は閃一を叱咤すると同時に詰る。

「そんな事嘘でも言わないで!!」「私にはもう何も無い、なのに貴方まで私を置いて私を一人にすると言うの??」「じゃあ私はどうすればいい??貴方まで居なくなったら、生きていたってしょうがないじゃない!!」と狂った様に叫び、涙する美里。

今まではどんなに閃一が弱音を吐こうと、決して否定せずに励まして支えてくれた彼女であったが、家族に売られ最愛だった筈の妹には裏切られ唯一の縁(よすが)であった我が子さえ取り上げられてしまった彼女には、もう何も残されていなかった。
だからこそ、愛する男まで失う恐怖に耐え切れず、つい責める様な口振りになってしまったのだが。
そこで初めて、眼が覚める様な衝撃に駆られた閃一はギュッと唇を噛み締め「……そうだな、済まなかった。君の方が辛かったろうに」と、謝罪を口にしたのだ。
辛くて苦しくてずっと逃げ出したかった、それでも今日という日まで乗り切れてこれたのは目の前にいる愛しい女の助力があってこそ。
それなのに自分の事ばかりで、閃一は今まで彼女の境遇や気持ちを顧みずにいた事を深く後悔させられた。
家族に捨てられ、夫と不仲が続く中、妹に殺されそうになって、平然としていられる筈が無い。
自分も似た様な境遇だからこそ、美里の辛さや苦しさが理解出来る気がしたのだ。だから、美里が泣きながら「私にこんな事を言う資格は無いのかもしれない。でも生きて…生きて私の側にいて欲しい。それが例え許されない事だとしても。あなたのことが–––」と、そこまで己の気持ちを吐露した瞬間、まるでそれを遮る様に閃一は言ったのだ。「今の俺には、君の期待に応える事が出来そうにない」と。そんな風に突き放す冷たい閃一の言葉に、まるで冷水を浴びせられたかの様に固まる美里であったが、生い立ちや親友の裏切りによる自身の喪失がそうさせるのか、いつだって閃一は決定打に欠ける言葉しか彼女に告げる事が出来なかったのである。そして閃一に接する内に薄々感じ取っていた美里が諦めた様に俯いた瞬間、閃一は折れそうだった心に鞭を打ち「だが、俺を信じてくれ。もう二度と…君を悲しませる様な真似はしない」と。
その、予想外な言葉にハッとさせられ顔を上げた美里が見やれば、そこには表情がまだ硬い物の、憑き物が落ちた様に清々しい瞳で真っ直ぐ美里を見つめる閃一の姿があった。

こうして、事態は一見好転したかの様に急速な変化を見せる。

まず、心身共に追い詰められていた閃一は美里の計らいで精神安定剤を入手する事が出来たので、心の安定と睡眠の確保に成功する。また、熊田と鶴巻が内密に協力してくれた事や、冷静になり罪悪感に多少苛まれた沙織が監視の目を緩め一輝への定時報告を誤魔化して伝えていた事(今までは厳しい報告をしていたが、多少の息抜きには目を瞑る様になった)、一輝自身も長期滞在且つ愛人同行の海外旅行という事でハメを外していたので閃一の事などどうでも良くなり、然して気に留めなかったなど、色々重なり以前より生活面が改善された。
だからこそ、いつまでもこんな劣悪な環境下にいるのは耐え切れないと実感した閃一はまず資金の貯蓄を試みた。
借金を肩代わりしてくれた一輝からは流石に給金こそ貰えなかったが、世間体を酷く気にしていた両親は憐れみも込めてささやかながら内密に給金を出していたので、元手に事業を始めようと企んでいた閃一は、ピンチをチャンスに変えるかの如く、独学で経学を一から学び直した。それこそ寝る間を惜しんで。

次に、裕造と美里についてどうすべきか悩んだ。
この環境下から脱出したいと真剣に考える様になったのも、総ては美里の為である。
他の誰の為でも無い、彼女を自分の手で幸せにしてやりたい、本心からそう考えた閃一はどうにかして2人を離縁させなくてはと密かに思っていた。
少なくとも美里は裕造を好いていないし、自惚れでは無く誰の目から見ても美里は明らかに自分に気がある。自尊心が低過ぎる閃一であるが、この件に関してだけは確信めいた物があった。
ただ、自分に借金が無くちゃんとした定職に就いていれば近い内に彼女の気持ちを確認しようという気にもなっただろうが、現状では躊躇われた。確信はあったものの、彼女の気持ちに応える事が出来ない現状では彼女を困らせるだけだと考えたからだ(彼女の性格ならば、途方も無い多額の借金を持っていようとも喜んで一緒になってくれるだろうと理解していたからこそ、今の中途半端な状態では彼女を不幸にするだけだと思っていた)だからこそ、閃一は決心したのだ。

誰にも知られず屋敷を後にし、総てを清算してから彼女に想いを告げようと。

勿論、一緒に連れ出す事や告白して迎えに来ると告げてから行方をくらます事も何度か考えたし、実際に迷った。

けれど、面と向かって一緒に着いて行きたいと言われたら、断る事など到底出来ないだろう。現にあの時側にいて欲しいとハッキリ言われ拒否出来なかった手前、慎重にならざるを得なかった。自分の選択次第で彼女の人生まで狂わせてしまうかもしれないと思うと、いい加減な覚悟で彼女に告白すべきでは無いと考えたのだ。

それに、美里には子供がいる。彼女は当初こそ子供が好きでは無いと漏らしていたが、沙織の子をまるで我が子の様にお互い可愛がっており(閃一にとっては苦手な兄でも、兄の子に罪は無いと考えていた。また、閃一自身不思議と甥っ子がまるで我が子の様に思えて何故か嫌いになれなかった。そして美里にとっては我が子である為、美里は言うまでもなく大輝を可愛がっていた)加えて養子ではあるが美里には裕介も居た為、2人を見捨てて閃一に着いて行く可能性は極めて低いと考えていたが、一方で時折縋る様に閃一の手を取り、必死に自身の秘めたる想いを告げようか告げまいか分かりやすく葛藤する彼女を前にして、自分の都合だけを優先して俺に着いて来て欲しいなどとは口が裂けても言えなかったのである。

結局彼は美里に直接自身からは一言も告げずに、屋敷から立ち去る決意を固めた。借金を返済し、彼女が望むなら子供も一緒に引き取ろうとすら覚悟を決めて。
しかし、暗黙の了解で想いを寄せ合っているとは言え流石に何も言わずに黙って消えるのは宜しくないと案じた荒屋敷が閃一に対して「美里様をお連れしなくて、本当に宜しいのですか?」と確認する様に問うても、閃一はハッキリと「あぁ」と答えるだけであった。
それが結果的に美里を悲しませる所か絶望させ、自殺に追い込むきっかけとなるとも知らずに。

そうして屋敷を出て行く前日、見るに見かねた荒屋敷から前情報を得ていた美里は引き止める意味も込めつつ、何かあったら資金の足しになる様にと密かに願いを込めて閃一にネックレスをプレゼントする。無論、表向きには只のプレゼントとして(そうでもしないと元々遠慮がちな彼は受け取らないだろうと踏んで)
それは結婚前に溜めた残り少ない有り金を全て注ぎ込んで買った揃いのペンダントだった(掛け合わせれば合体するタイプ)
それでも閃一の決意は変わらず、一言も彼女に屋敷を出て行く計画について発さず普段通りに接するので、美里は戸惑いながらもただただ不安でしか無かった。立場上、言及する事は憚られる。何より問い詰めた所で簡単に口を割る性格では無いと熟知していたからこそ、美里は閃一から話す様に仕向けたつもりだったのに、とうとう閃一は何も言ってくれないままだった。
その代わりに「今まで有難う。君が居たからこそ俺はここまで耐える事が出来た」と記した別れの手紙を荒屋敷に託して去ってしまう。その手紙を次の日に荒屋敷経由から受け取った美里は薄々勘付いていた為にある程度覚悟は決めていたつもりだったが、その場で静かに泣き崩れ、唯一の心の拠り所であった閃一にすら見捨てられ総てを失った事実を痛感する。
こんな事になるくらいなら世間体など気にせず、ネックレスを渡す際に自分も連れて言ってくれと縋れば良かった、そもそも屋敷を出て行くのは本当なのかとちゃんと問い詰めれば良かったと、後悔しても仕切れない事ばかりが脳裏を過る。
一方で閃一自ら告白し、連れ出してくれる様働きかけて欲しかったからこそ仕方がないのだとも自分に言い聞かせた。夫の居る身で連れ出して欲しいなんて口が裂けても言えない、ましてや養子とはいえ子供が居る身の上。何より連れて行ってくれと縋った所で、上記を理由に体良く断られるのが何より怖かった。軽薄で尻軽な女だと思われ彼に幻滅されるのが怖かった。だからこそ愛してると何度も告げようと試みたものの、最後の最後まで理性が阻んで許してくれなかったのだ。

そんな自分本位な自分に嫌気が差し、閃一が消えた日を境に美里は媚薬の効果も相俟って精神が一気に不安定となり鬱状態に陥る。
更に追い討ちをかけるかの様に、意識不明で長らく入院して居た縁の意識が偶然にも戻り、鬱が加速する。
最初こそ因果応報だったかもしれないと縁本人も多少自責の念を持つものの、自身の子が姉の養子となり本堂家で確固たる地位を築いて居ると知るや否や、縁は姉に激しい憎悪を直接ぶつけて来る様になる。
しかし、聞くに耐えない罵詈雑言が毎日飛び交うも当の美里には届かない。見兼ねた裕造が縁の殺人未遂計画について糾弾し、養子の件については自業自得だろうと一蹴するが、縁は美里の母子手帳を確認していたのでまるで不都合な事には答えまいと言わんばかりに話をすり替える。
それについて裕造は流産したと嘘を吐くが、縁はそんな姉を不憫に思う所か、遺産分配の際に得をしたい気持ち(自分の取り分を少しでも増やしたい)のと姉への長年の妬み故に、強欲な女だの遺産目当ての癖にと言い掛かりも甚だしい悪態を吐く(て「流れたんだったらまた作ればいいじゃん‼人の赤ちゃん奪ってまで遺産が欲しいの⁇どこまでも根性が卑しいんだね」など)
そして、「裕作じゃなくてアンタが死ねば良かったのに!」の一言が決定打となり、美里はその日に遺書を残して自殺してしまう(あぁ、そうか。私さえ居なければ誰も不幸にならずに済んだんだ。と考え、そもそも何故生きているんだろう。一番一緒に居たかった人はもう側にさえ居てはくれないのに。と思い立った様に)

当然、美里を愛していた裕造は多大なショックを受け、放心状態となる。
そして彼女を追い詰めた原因は自分にあると激しい後悔に駆られ、後追い自殺を考える様になる。
そんな時、たまたま処分しそこなった美里の遺書を手に入れたケイは裕造に事実確認を求める。
最初こそ語る事を拒否した裕造だが、何故そこまで彼女について聞き回るのか気になった裕造が「…まさかとは思うが、お前も美里に気があるのか?」と訊ねれば、迷わず「そうだ」と間髪入れず答えるケイ。
そんな、清々しい程正直なケイに面食らいつつもあからさまに不機嫌な表情を浮かべた裕造に対し、ケイはハッキリと「誰が誰を好きになろうと関係あるまい。ましえや不倫でも無く、私が一方的に彼女を好いていただけなのだから。真実について知る権利は無くとも、知りたいという欲求を持つ権利はある」などと述べる。

ちなみに遺書には、閃一と明言されなかった物の「もし、万が一にでも機会があったらあの人に伝えて下さい。私は貴方をお慕いしておりました、初めて出逢ったあの日からずっと。と」と記されていた。
ケイも薄々、美里が閃一に気があると踏んではいたが確証が無かった。だが少なくとも自分と裕造が相手では無いと分かる。そしてもしあの人というのが閃一を指すというのなら、何故彼女を置いて行ったのかと問い詰めてやりたかった。
閃一も美里に気があると分かっていたから、2人が両想いだという事は周知の事実だったからこそ、ケイは身を引こうと考え諦めたのだ。
もし閃一が居なかったら、夫と不仲の美里を堂々と口説き落とし、離縁させただろう。それくらい彼女を真剣に想っていたケイは、閃一の事が何よりも許せなかった。彼が美里の気持ちにも己の気持ちにも向き合わず逃げたせいで、美里が死んだのだと思い込んでいたから。
そんな、事情も知らず閃一を責めるケイを滑稽だと思う一方で、自ら招いた愚行で彼女を追い詰め死なせたと自責していた裕造は、まるで懺悔する様に真実をケイに告げる。

総て私が悪かったのだと。あの2人の仲を引き裂いたのは他でも無い私なのだと。
驚愕の真実を知らされたケイは思わず絶句し、裕造は静かにその場を立ち去る。ケイに話した事で気持ちが軽くなった裕造だが、うっかり2人の会話を裕介が聞いていた事に気付き、覚悟を決める。

そして数年後、最愛の義母を殺された恨みを晴らすかの様に裕介は義父である裕造を毒殺する(裕造は薄々であるが、自分に対する裕介の態度が一変して余所余所しくなり、敵意を感じ取れる様になったので毒殺される直前も自分の死を予感していた。だが、美里の自殺に対する罪悪感や負い目から、敢えて裕介の毒殺に乗っかる形で服毒自殺を果たす。形だけの家宅捜査が行われるが、まるで死に場所を求めていたかの様に予め遺書を用意していた裕造のお陰で、裕介は不問にされ特に疑われる事もなく切り抜ける事が出来た。ただし本堂家は代々警察関係とも非常に懇意だった為、裕介が仮に逮捕されても直ぐに無罪放免で釈放されたに違いない)

ちなみに縁は裕造夫婦への殺人未遂と夫裕作の殺人罪で刑務所行きとなり、大輝と遙の結婚式前後に釈放されるが、どうしても真実を知らせたかったケイから真実を知った閃一の手により殺害される(余談になるが、美里の墓に花を添えていたのはケイであり、美里が死んでからケイだけが欠かさず毎年命日に華を添えていた。ちなみに閃一は美里の死後数年は失意にあり、彼女の死を認めたくないが為に墓には勿論実家にも寄り付かなかった。ただし実家に関しては諸悪の根源である兄が居たという理由も大きい。裕造も同様に、美里の死を受け入れられず死ぬまで墓参りには足を向ける事無く死去。黒瀬に関しても、美里の死を知るなり後を追う様に病死した為、生前墓参りを行う事は叶わなかった)その後、やり残した事はもう無いと言わんばかりに大輝が社長に復帰したと同時に閃一は自殺する。



以上です。

いやぁ、長い長い(笑)

でもいつか閃一さん編も書きたい。

ラブセンはどーやら親子三代に渡ってようやく前屋家と本堂家が交わる事になるという、壮大な家系恋愛話らしいですね←

私自身はまぁ気に入ってます。

決して叶わなかった裕造さんの本懐が、血筋という形でようやく三代目にして報われる訳ですからねぇ(閃一さんと美里さんは精神的肉体的には繋がれたけど、決して望んだ形では無かったのでお互い心残りを抱いたまま生を終えたので、そういう意味では裕造さん同様三代目にしてやっと実を結んだ事になるのかな)

ちなみに美里さんは失意の中自殺しましたが、閃一さんと出逢った事だけは全く後悔してません。
自分の人生を捧げても構わないくらい激しく人を愛する事が出来た、ただそれだけで自分は幸せになれた、それが仮に一時だけの幸せだったとしても。そういう気持ちがあったからこそ、彼女は閃一さんや裕造さんを恨む事も憎む事もせず静かな気持ちで終わりを迎える事ができたのです(ただし自分を責める余り、苦しくて辛くて絶望の淵に立たされて後が無くなったが故の自殺なので、心残りはあった。愛しい我が子の成長を見たい気持ちと、その我が子が他人のことして育てられながら妹や夫に詰られ責められる毎日は彼女にとってまさに地獄だったに違いない)


あと個人的には不倫になるので容認したくは無いのですが、元々閃一さんも美里さんもする気は無かったのにさおりんのせいでこんな事に…(酒と媚薬の勢いとはいえ、好きな人に迫られて拒否出来る人はそう居ない筈。仮にいたとしても絶対その後後悔するし、事実美里さんはその後一度も閃一さんに気持ちを伝える事さえせず自分の人生と決別した。閃一さんが美里さんの気持ちに気付いたのは、ケイさんから話を聞いた後の事だった)

まぁ、ぶっちゃけ肉体関係は最初無い予定だったんですけど作者的につまらなかったのでこうなった次第なんですがね←



だってねぇ

可哀想じゃん。


せめて一度でも結ばれて欲しいじゃん。



書きながら余りの救いの無さにドン引きして、急遽こうなっちゃったんですよ(別に不幸なのが好きって訳では無いです。物語の軸になる部分だったので止む無くこうなったんです。過去の話と都合合わせていったらこうなったんです。昔の私、何も考えずに書くなよ!!)


そしてこんなもんを書いておきながら、せんみさにおいては番外編漫画のストーリーの方が二人らしくて好きだったりします(苦笑)

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