伝勇伝
□ハンター
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「シオン、俺トレジャーハンターになる」
ぜぇはぁと息を切らせて家にきたと思えば、一体こいつは何を言い出すのか。
いまいち状況が飲み込めず、シオンは首を傾げた。
外は晴れ。
暑くもなく寒くもない、絶好の昼寝日和である。
そんな日にわざわざライナがやってきたのだ。
しかも自らの足で、走ってきてまで。
この状況から考えられるのは一つだろう、とシオンは思う。
「寝言か」
「いやいや、起きてんだけど?」
なんて、万年昼寝男が否定してきた。
それにシオンは少し可笑しな気分になって、
「寝言は寝てから言え」
と、笑顔を返した。
「いやいやいや、だから寝言じゃないんだって。」
「ライナ…いくら今日が昼寝日和だからって、歩きながら寝るのは流石にどうかと思うぞ?」
「だから寝てないって言ってんだろうがぁぁああああ!」
ムキになって噛み付いてくるのをひとしきり楽しんだあと、それで?と尋ねた。
ふふん、とライナが顔を緩める。
「まぁ、聞いてくれよシオン…
毎日毎日学校へ行けとキファにたたき起こされ、学校ではフェリスに虐められ…
そして、勉強に追われる日々!
昼寝がだぁいすきな俺はふと思うわけよ。『俺、このままでいいのかな…?』と。」
「ほう、それで?」
「そこで俺は考えついた!一人気ままに昼寝出来る素晴らしいお仕事を!」
「…それが、トレジャーハンター。」
「そ、トレジャーハンター。」
と、自信たっぷりの顔を向けられる。
だが、どういう思考回路でその結果に落ち着いたのかまったくわからない。