伝勇伝
□予想通りに
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「来月の慰安旅行は有名な温泉旅館にしようと思ってるんだ」
そう告げると、彼は面白いほど反応をしめした。
先程まで眠たげだった双眸が見開かれ、頭が勢いよく上がる。
そして、
「…はぁ!?」
と、驚いたような顔でこちらを見た。
予想通りの反応に、少し、楽しくなる。
「ごろごろだらだら、好きだろ?ライナ」
「いやいや、確かに好きだけどさ。
慰安旅行なんて俺初耳なんだけど?」
そう言って、疑わしげな視線をむけてくる。
きっと、彼のことだ、裏があるに決まっているとでも考えているのだろう。
それに俺は、用意していた言葉を答える。
「クラウ達が、俺は働きすぎだとうるさいんだ。
俺とライナは別にいいんだが…
部下に俺と同じものを求めるのは上司として失格だろう?」
「って、俺はいいのかよ!
つか、何言ってんの?って顔で見るんじゃねえええ!?」
「え?いつも仕事下さい☆って言ってくれるのはライナの方じゃないか」
「一言も言った覚えないわああああ!?」
あぁだこうだと、ひとしきり問答を繰り返した後、
ライナが観念したように両手を挙げる。
そして、予想もしなかった一言を放った。
「あー、もう勝手にしろ。俺は行かないからな」
「……は?」