伝勇伝

□ハンター
2ページ/3ページ

「考えても見ろよシオン。
着の身着のまま世界中を旅して、好きな時に寝、好きな時に宝探しをするんだぞ?
これぞ男の浪漫だろ!昼寝大好き!」


あーそういうこと、と納得。
結局ライナは昼寝がしたいだけで、男の浪漫なんて二の次…いや、三の次かもしれない。
それにライナらしいなぁ、とシオンは笑った。


「あっ、お前笑ってんじゃねぇよ!折角連れてってやろうかと思ってたけどやめやめ!
やっぱ俺一人で旅してくる。」


「えー、酷いなぁ。フェリスとキファに告げ口しちゃおうかなー」

「げっ!?やめろよお前!そんなことしたら昼寝させてもらえなくなるだろーが!?」

「ははは」


そういえば笑ったのは久し振りかもしれないなーなんてふと思った。
最近は受験だの生徒会の仕事だのでずっと気が張っていたから。
自分が頑張らなければ、と荷を背負っていたから。


あぁそうか、だからライナは。


思い当たって、口端が思わずにんまりと上がる。
固くなっていた顔の筋肉がいとも簡単に緩んだ。


「な、なんだよシオン。」

急に満面の笑みを浮かべたシオンを、ライナは訝しげに見る。

「いや、やっぱり俺は宝探しには行かないで良いかなーと思って、ね」

「はあ?」

「だって、俺の宝物はお前だから」

「…………………!?」


一瞬ぽかんとした後、ライナは顔を真っ赤に染めた。
口をパクパクさせてあ、だのえ、だのと言葉を漏らす。
やがてうぅ、と呻いて恥ずかしそうに俯いた。


「……お前、恥ずかしくねーの」

「事実だから」


更に顔を赤くするライナを見て、シオンは胸がいっぱいになったような気持ちになった。



「俺から逃げられると思うなよ、ライナ」


そう言ってにやりと、楽しそうに笑った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ