メイン

□絶対領域
9ページ/28ページ

「こ、これは一体?」
学祭でも並ぶ出し物は多々あれど、尋常ではない
並び列に幸村は一瞬たじろいだ。

「まあまあ、まずは並んで確かめようぜ?」
「はあ……。」

これだけ並ばされたら限りある学祭の時間を
浪費してしまうのでは?と疑問に思っていた
所に、小柄なギャルソンの衣装を身に付けた
子が幸村達に近付いて来た。

「お待たせしてしまい申し訳ございません。
只今整理券をお渡ししております、此方に
書かれた時間の15分前にお戻り頂けますか?」

ギャルソンは丁寧に説明すると幸村達に
整理券を渡した。

「なる程…そうすればこの時間までを
有効に使えるのでござるな。」

「はい、是非ゆっくりと他の出店も楽しんでから
お越し下さい。」

「ありがとうね、可愛いギャルソンさん♪」

「な、可愛いなどとは失礼ではござらぬかっ!」

「何で?」

「男に可愛いなどとは余り誉め言葉には
なりもうさぬっ!」

自分自身が幼少の頃より散々言われ不快だった
幸村は、ついムキになる。

「だって、女の子はみんな可愛いんだもん。
しょうがないだろぉ?」

「ん?今、何と申された?」

「え?もしかして幸村、彼女の事
男だと思ってたの?」

「はっ?」

「男子に間違えて頂けたのなら
ギャルソンとして光栄です。」

ニッコリと微笑んだギャルソンをよくよく見れば、
肩の線や顔立ちも細く柔らかな女性的なものだった。

「なっ、なっ……っ!何たる事っ!この真田幸村、
人を見た目のみで判断してしまい見抜けぬとはっ
…不覚なりぃっ!」

「はいはい、そーゆー鈍いとこが幸村なんだからさ。
それじゃあ時間まで少し他回ってくるから、
お騒がせしちゃってごめんねーっ!」

激しく凹んだ幸村は、腕を掴まれ半ば強制的に
その場を後にした。



***********


「何か外が騒がしかったが大丈夫か?」

ちょうど行列対応をしていたギャルソンの
彼女が交代で戻ってきたところを政宗が声をかけた。

「うん、大丈夫でしたよ。ただ…すっごい
格好いい子に男と間違われて、その子が
ビックリして叫び出しちゃったんですよ。」

「Ha?ったくどこのガキが紛れ込んだんだかな。」

「それって…もしかして…ね、その子って
後ろ髪一束だけ伸ばした目がクリッとした
美少年系だったかな?」

「そうだけど…もしかして猿飛くんの知り合い?」

「ヤバい……ね、整理券何時の回渡した?」

「あと1時間後だから13時かな?」

「ね、独眼竜の旦那…その時間だけ裏方に回れない?
そしたら今日は休憩なしでいいからさ、ね?お願い!」

「…そんなに鉢合わせしたらマズい相手なのか?」

「マズいよ……俺様が長年築いた信頼ダダ崩れに
なっちゃうからっ!」

「……OK。それじゃあお前に貸し一つな?」

「貸しの一つや二つ安いもんだよっ!
サンキュー独眼竜の旦那。」


この時の貸しが後々大きく運命を狂わせるきっかけに
なるとは、この時の佐助は知る由もなかった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ