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□絶対領域
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理想の女の子を自分の中に見出して
からと言うもの、更に人前で自分の
癖を路程してしまわないよう細心の
注意を払った。

『おい猿、何浮かないツラしてんだ?』

『いや、明日さ幼なじみの子が来るって
きかなくて。』

『Han?こんな格好を好きな奴に見せられ
ないってんでお悩み中なのか?』

『ばっ、違うって。その子は男!』

『なんだ、片思いなのか?』

『そうじゃなくって!もう、独眼竜の
旦那ってば質の悪い冗談言うんだから〜。
俺様くらい女の子大好きな奴そうそういないよ?』

『そうか?その割には長続きしてない
みたいだが…。』

『え?ちょっと、何で旦那がそんなの
知ってんのさ?』

『さあな。ほら、準備さっさと済ませて
明日に備えて早く帰るぞ!
徹夜で準備なんてのは計画性のなさを
自慢するようなもんだからな。』


政宗は口は悪いが至極真っ当な意見しか
言わない。
最初は引き気味だったゼミの連中も、
今ではすっかり政宗を筆頭として
一丸となっている。

同い年で起業し、人の上に立つ彼には
ビジネスの才能だけではなく、
人を惹きつけるカリスマ性があるのは
認めざるを得ない。

『よし、明日は7時に集合だ。
こんだけ早く上がってんだから
遅刻したらどうなるか…分かってるよな?』


訂正…。カリスマ性+力づくだった。


そんなこんなで学祭前日にも関わらず
20時前には帰宅の途に着いた佐助は、
玄関前でガッシリと力強い手で腕を捕まれていた。

『待っておったぞ佐助っ!』

『げっ!だ、旦那ぁ…。』

『学祭は明日でござろう?頼んでおいた
チケットを受け取っておらぬから
待っておったのだぞ?』

『待ってなくて良かったのに…。』

『ん?何か申したか?』

『ううん、何でもない。えっと…二枚で
良かったっけ?』

渋々ながら頼まれていた入場チケットを
渡すと、幸村はなくさないようシッカリと
財布にチケットをしまった。

『うむ、同じ大学を志望しておる者から
頼まれてな、学校見学より学祭を見た方が
大学の雰囲気が掴めるそうだ。』

『や、そうかなー?結構真剣に悪ふざけが
過ぎてるけど…。』

『何事にも真剣であれば良かろう!
ところで佐助は当日何処におる?』

『それはぁー……わかんないや。』

『な?それでは佐助に会えぬではないか!』

『俺様さ、サークルやゼミの出し物で
あちこち掛け持ちしてんだよね。
だから何時何処にいるってハッキリ
言えないんだ。ごめんね?』

『む、そうか…。佐助も多忙なれば
致し方ないな。俺が携帯を持って
おれば連絡の取りようもあったのだが…。』

『まあまあ、もう明日本番だから
仕方ないよ。偶然会えたらラッキー位に
思っておいて、友達と楽しんできてよ。』

『わかった……すまぬな、我が儘ばかりで。』



素直に引き下がられた途端、佐助は罪悪感で
胸が痛んだ。

掛け持ちなどなく、明日はメイドカフェに
かかりきりだと気軽に言ってしまえれば良いが、
初心で女性が苦手な幸村に、偽物とは言え
女の姿で会うのは流石に躊躇いがある。

『ほんと……ごめんね。』

『大丈夫だ。あまり気にせず
明日は佐助の役割を全うしてくれ。』

曇りのない瞳で真っ直ぐ見つめられた佐助は、
更に胸が痛むのを感じた。
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