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□絶対領域
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あの後、恐る恐る教室に戻ると旦那達は既にいなかった。
ほっと一息つく間もなくカフェは大盛況で、翌日も殆ど記憶がない位の忙しさだった。
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「みんな、2日間よく頑張ったな。お陰で今年の学祭で話題総ざらいだ!」
二日間の忙しさに見合う以上の売上のお陰で、労を労う打ち上げはかなり豪勢な内容になり、皆のテンションもまだまだ上がりっぱなしだ。
「今夜はとことん楽しもうぜっ!」
あちこちから乾杯のグラスが鳴り、宴は終始盛り上がった。
「そうだ、衣装は各自で持ち帰っていいぞ。但し夜のplayに使うなよ?」
「彼女に着せたらブカブカだよー」
「じゃあ自分で着たら?」
「普通にドン引きされるから…」
何のかんの茶々が入りつつも二日間で愛着も湧いた衣装を手土産に、宴は解散し、二次会組や帰宅組で三々五々に散っていく中、夜風にあたりガードレールに寄りかかっていた佐助の隣に政宗がやってきた。
「なぁ猿、今バイト何かやってるか?」
「え?夏休みでファミレスのバイトは終わったから探してるとこだけど…」
「そっか…、それならお前をスカウトしてもいいんだな?」
「何の?」
「学祭でやった店は言わばプロットタイプでな、本格的に店舗構えてみようと思ってんだ。」
「マジで?」
「ああ、それで準備段階からお前は使えると目えつけてた。場の空気を読めるし仕事も早い、保身より店のトラブル回避に体が動く。」
「何ぃ?そんなに褒めても何も出ないよ?」
何時も口を開けば余計な一言をつけられてきた佐助は、手放しに自分を評価する政宗に妙に照れてしまった。
「料理も得意ならメニュー開発も携われるぞ?」
学祭では忙しさを想定して、軽食メニューは出さなかったが試作のアイデア出しをしていた佐助から、自炊してる事を少しだけ話したのを政宗は覚えていた。
「よっく覚えてたな、でも…楽しそうだね。」
「それに……お前がお前らしく変身して良いんだぜ?」
「え?ちょ、やだなぁ〜女装趣味なんてないってば!」
「そうか?その割には鏡見た時、自分の理想が目の前にっ!て顔してたな。」
「うぅ…、」
図星をつかれて次の言い訳が口から出なくなる。
「もう一度その衣装着てみて、自分の欲望持て余すようだったら連絡しな。」
そう言うと政宗は仕事用の携帯番号の入った名刺を渡して迎えに来た車に乗りこんでいった。
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「ふぅ…」
佐助が自宅に着くと既に日を跨ぐ時間だった。
早寝早起きな幸村は今頃夢の中なのか、部屋の明かりが暗くなっているのを確認してから玄関を開けた。
「や、万が一って事もあるからなぁ…」
手土産に持たされた衣装の入った紙袋を隠すように抱えてしまう。
あのニアミスで奇跡的に見つからなかったのに、ここで衣装を見られては元も子もない。
玄関の鍵をしっかりと施錠し、二階の自室に駆け上がると、おもむろに衣装を取り出した。
「べ、別に…誰にも迷惑かけなきゃ…いいよね?」
自分自身に言い聞かせるように呟くと、着ていたシャツとデニムを脱ぎ捨て、フリルが愛らしいワンピースに袖を通した。
「う…すっぴんだとやっぱキツいな。」
フルメイクの偉大さを噛み締めた佐助は、普段見慣れた顔と首から下の可愛らしい衣装に身を包んだ肢体とのギャップを目の当たりにした。
「か、髪型をツインテっぽくしたらどうかな…」
肩まである地毛を生かしてヘアゴムで二つに縛る。
「お、ちょっとイイかも?」
男にしては白くて滑らかな項と後れ毛が佐助的にはツボだった。
「この脚のラインと絶対領域もなかなかどうして…」
細くしなやかな脚を姿見の前で組み替えたりしていると、オーバーニーとミニスカートからチラリと見える太腿の白さに、己の脚であるのも忘れて興奮してきた。
「や、そりゃ…マズいって…」
スカートの奥で僅かに反応してしまった下肢を持て余す。
女装した自分を見て興奮するなんて、とんだナルシストな変態だ!
頭では分かっているのに、意志に反して佐助の右手はスカートの中へと侵入していった。