メイン

□夏の恋はお疲れSummer
4ページ/25ページ

「まずは風呂でよーっく暖める…っと。」

政宗の協力で一通りの予備知識と道具をゲットした佐助は、家に帰るなり風呂場へ直行した。

いつもならザッと洗うだけで、意識して触れた事などない箇所に、これから触れるのかと思うと些か緊張してしまう。

しかも、幸村と一緒に風呂に入ったあの日以来、湯船に浸かる度に幸村が背後に居た感触を思い出してしまい、ついついシャワーで済ませてしまっていた。

政宗の気遣いか、わざわざリラックス効果のあるアロマの入浴剤が入っていたので、ありがたく使わせてもらう。

「くっはぁー!一番風呂最っ高!」

人工的な香りではなく、ふんわりと包み込むような柔らかい香りで、身体の緊張も徐々に解れて行き、久々にゆったりと湯船に肩まで浸かると、身体の芯まで暖めた。

「それにしても……本当にあんなの自分で出来るのかな?」

ハウツー本に書かれていた後孔を慣らして快感を得る自慰は未知の領域で、自分一人だけで調べていたら即座に挫折しそうだった。

「でも、竜の旦那がここまでお膳立てしてくれたんだし……。」

女の子に幸村を取られてしまうのではと言う焦りから、衝動的に先手を打とうとしたのは確かだが、具体的な案はなかった所に政宗から出された提案は『抱かれる準備でもして迫ってみろ!』だった。

「いっくら女の子が苦手だって言ってもさ、こんなひょろ長い野郎相手じゃ興奮しないよなー。」

ついこの間まで自分の方が背も高かったし、男にしては華奢めに見えるが武術を嗜むだけあって、無駄の無い筋肉がしっかりとついている己の身体を、まじまじと湯煙でぼやけた鏡越しに観察する。

「や、もうそんな言い訳してる暇なんてないんだから!」

かすがは女の子が苦手な幸村に気を利かせて断ってくれたが、こんなの氷山の一角だ。
自分が及び知らぬ所で告白される可能性だって十二分にある。

顔に向かって湯船の湯を両手の平で掬って叩き付け、佐助は深く深呼吸をして覚悟を決めて湯船を出た。





「慣らすのはこのジェルだよな?」

チューブ状の容れ物から絞り出した半透明のジェルを右手の人差し指に絡めると、背後から腕を回して己の双丘の狭間に触れてみる。

「ん…?あれ……もっと奥か………よっと。」

色気もへったくれもない独り言を呟きながら探ると、自分の尻肉が意外と柔らかい事に驚いた。

「もっとゴツゴツしてるかと思ったけど……結構弾力あって触り心地いいんじゃないかな?」

空いている左手で尻たぶを揉んでみると、筋肉の弾力と適度な肉感がある。

「だからって野郎の尻は尻だしなぁ……。」

それでも今尻たぶを揉んでいる手が、もしも幸村だったら……と考えると、背筋をゾクッと悪寒にも似た感覚が突き抜ける。

「は………、何だこれ………っ、んっ!」

欲望のスイッチが入ってしまった佐助の手は止まらず、今度は以前に湯船で何故か勃っていた幸村の一物が触れた尾てい骨付近を擦りながら、右手の人差し指を双丘に滑り込ませて入り口付近を円を描くようにジェルを塗りつける。

これが自分の指ではなく幸村自身だったら。と想像すると、後孔がジンジンと痺れていくのを確かに感じていた。

「う…そだろ……ぉ……?」




『それで…………?』

「んー、何とか第二関節位は入ったんだけど、それ以上は怖くて抜いちゃった。」

まるで部活の特訓成果のように報告する佐助に、流石の政宗も軽く目眩を覚える。

政宗にとって佐助は全くもって恋愛や欲情する対象ではないが、こうも頼りきられてしまうと、後々幸村から要らぬやっかみを持たれかねない。

『ま、最初はそんなもんじゃねーの?』

「後でもうちょい試してみるけどねー。あ、そう言えば竜の旦那は試した事ないの?」

『ばっ、ある訳ねーだろっ!』

「えー、それなら旦那も試してみなって。これから必要になるかもしれないし。」

『お前と違ってそんな予定はないから心配すんなっ!』

「そっかなぁ……後で泣き見ても知らないよ?」

『おい、嫌に核心があるっぽい言い方じゃねえか。』

「さあ?折角なら競い合う相手ってか同士が欲しいからさ。ね?どう?やってみない?」

『それ以上言うと今後お前の着信全部拒否んぞ?』

「もぉー!頑固なんだからぁ。ま、俺様が先発隊で頑張ってみるからさ、旦那もボチボチ腹決めておいてねー。」

傍観者で協力者のはずが、急に自分も試してみろと無茶ぶりされた政宗は、佐助の思わせぶりな態度が気になりつつもどうにか自分が試すのは回避した。

「冗談じゃねーっての。大体何で俺があんな事………。」

「政宗様、宜しいでしょうか?」

控えめにドアをノックし、部屋に入る伺いをたてる声の主に、思わずギクリとする。

「あ、ああ……いいぞ?」

「失礼します。」

扉を開けた小十郎の手には、厚手のバスタオルとアロマと精油の瓶。

「今夜はグレープフルーツとベルガモットを用意しましたがいかがですか?」

「ああ、それで頼む。」

幼少の頃病弱だった政宗は、なかなか寝付けずボディガード兼子守り役だった小十郎に毎晩背中を擦って貰っていた。

その習慣が抜けず、未だに小十郎は寝る前に政宗が安眠が出来る様にアレコレ試していた。
最近ではアロマオイルを使ったマッサージが効果が出たからとやたら凝り出し、ご丁寧に全身くまなくオイルをたっぷりとつけた大きな手でリンパマッサージを施してくれる。

昔からの習慣だからと特に気にしていなかったはずなのに、日中佐助に小十郎との仲を勘違いされたせいもあり、妙に意識してしまう。

「今夜は随分と凝ってますが……いかがされましたか?」

「あー、ちょっとな……大した事ねぇから気にするな。」

「貴方が他人を家に入れるなど珍しいですからね。お疲れになられたんでしょう。」

「かもな。」

家のごたごたもあり、極力他人とは適度な距離を保って来た政宗は、慣れない世話焼きに自分でも知らず知らずの内に余計な力が入っていたのかもしれない。

「あ、そこ……もう少し強く……。」

「承知しました。」

佐助は二人の仲を疑っていたが、幼少より見て来た限り小十郎がセクシャリティな目で自分を見て来た事など一度もない。

「猿は深読みし過ぎだな……。」

「?何の話ですか?」

「いいや、ただの独り言だ。」

「……はあ。」

自分の事は棚に上げ、次に佐助から報告を受けたらどう返すかを思案しつつ、小十郎の的確に心地良さを引き出す手の感触に身体を委ねた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ