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□夏の恋はお疲れSummer
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「旦那ぁ、悪いんだけど今日はちょっと用事が出来ちゃってさ、先に帰ってもいい?」

いつもは幸村の部活が終わるまで待ち、一緒に家まで帰るのだが、その日に限って佐助は眼前で両掌を合わせて頭を下げ、先に帰る事を詫びている。

「何か急用でも出来たのか?」

「もうすぐ夏休みだけどさ、今の内に出された課題を竜の旦那と共闘して片付けとこうと思って。」

「そうか…政宗殿とか。だが夏休みの課題なのだから休みに入ってからでも良かろう?」

「そうなんだけどさ、今年は武田道場の創立記念祭の実行委員任されてるだろ?気力体力を温存しときたいし。」

二人が通う武田道場の創立記念祭は毎年夏に行われ、全国各地の支部から代表格が一同に集まる通称『武田漢祭』とも呼ばれている武術大会と慰労会だ。

「そうであったな……。お館様の為ならば仕方有るまい。」

「先に課題終わらせたら、旦那の課題手伝ってあげるし、旦那は部活と鍛錬に集中しときなって。」

「ああ、すまぬが頼んだぞ佐助!」

こうして夏休み前の放課後時間をゲットした佐助は、意気揚々と政宗にこれから家に向かう旨をメールした。





「大体付き合ってないんだったら、たかが放課後位好きにしろよ?お前は真田に束縛され過ぎだっつーの。」

「えー、でも旦那と一緒に帰るのって昔っからの習慣だし、今更別行動するのって何か違和感あるんだよねー。」

「チープな言い訳までしてやるのがコッチの課題だなんて知ったらアイツどんな顔するんだろうな?」

「ちょっと、旦那にバラしたら本気で怒るよ?」

「へいへい、そんじゃ早く上がれよ。」

「ほーい、お邪魔しまーっす♪」

地元でも有名な名士の家系な政宗の家は、漫画に出てくるような豪邸だが、母親とそりの合わないとかで政宗には別棟が用意されていた。
それでも個人の部屋には贅沢すぎる広さで、佐助の家の何倍もある。

「そういや竜の旦那の部屋って初めて入るね?」

「そりゃそうだろ。学校の奴ではお前が初めてだからな。」

「やだっ!俺様ってば竜の旦那のお初いただいちゃった?」

「いいから早く入れ!」

緊張も相まっていつもよりテンションの高い佐助を軽く叩くと、エントランスを通り、30畳はあるリビングに通される。

ドッシリと重厚感のある本革張りのソファに腰掛けると、政宗がミントの緑が鮮やかなジュレップソーダをテーブルに置いた。

「あー、これ片倉の旦那が育てたヤツ?」

「まあな。最近ハーブ類にまで手ぇ広げてんだとさ。」

「へぇ………いいなぁ〜愛されてるって感じで。」

「は?どこがだよ?」

「前にフレッシュネスのモヒートジンジャーエールにハマってただろ?その後に片倉の旦那がミントの苗買ってるの見かけたもん。」

小十郎が新しい野菜を育てるのは、大抵政宗が興味を持つか、身体に良さそうな物だ。
それは当たり前で然程気にしていなかったが、改めて第三者から指摘されると妙に照れくさい。

「べ、別にそれがどうしたってんだよ!」

「へへー、照れない照れない。」

「それより、本題に入ろうぜ?」

からかわれた政宗が、ちょっと待ってろ、と言い残し部屋を出てしまったので、佐助は呑気にジュレップソーダを啜って待つ事にした。
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