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□絶対領域
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最悪だ…

いくら夢とは言え、小さな頃より可愛がってきた幼なじみを自分の欲望に絡ませてしまったのだ。


いやいやいや、俺は別に女装した自分に欲情してるだけで、男にどうこうされたいなんて考えた事は一度たりともなかったはずだろ?
ましてや…あんな、その…お尻になんて…ネットで見て興味はあったし、通販で下着を買うついでに道具も買っちゃったよ?
でも、まだ自分でも弄った事ないっつーの!


しかし、夢では後孔を弄ばれ戸惑いながらも感じていた。

それは自分でも気付いていなかった心の奥底に眠る願望なのだろうか?

あれこれ考えた所で、濡れた下肢に現実を突きつけられた佐助は、鉛を飲み込んだように重くだるい身体を引きずりバスルームへ向かった。


汚れた下着をすぐに証拠隠滅したくて、寝間着変わりのスウェットごと脱ぎ捨て、下着を洗面台で洗う。

本当は触るのも嫌だから洗濯機に纏めて放り投げたかったが、他の衣類に己の欲望が感染してしまいそうで怖かった。

「大丈夫、全部水で流しちまえば…そうだよ、あんなの只の夢だろ?」

流水で欲望の証を徹底的に洗い流すと、少しだけ罪の意識も一緒に流れていく。


「佐助ー、これ………なっ!!」

流水で周囲の音をかき消された佐助は、何時もなら気付く幸村の足音を聞き逃していた。

って、玄関の鍵閉め忘れてたっけ?

「あ、旦那おはよー……あれ?」

つい何時もの癖で普通に声をかけると、幸村の足元でバサッと物が落ちた音がした。
視線を下げると、幸村の母親がよく差し入れにくれる焼きたてのクロワッサンやデニッシュの詰まった袋が転がっていた。

「お、お、お前は……な、何と破廉恥なっ!」

一瞬自分の欲望がバレたのかとヒヤッとしたが、よくよく見てみたらスウェットを脱いだ下肢は上のゆるめなロンTでわずかに隠れているだけで、脚は太腿までむき出しだった。

「破廉恥って……、昔は風呂だって一緒に入っただろぉ。それに俺様男なんだから脚くらいで恥ずかしがる事ないでしょ?」

「あ、う…む、そうだ…な。」

口ではそう言いながらも視線はあちこち泳ぎまくって明らかに動揺している。

「やっだなぁ旦那ってば。もしかして破廉恥な目で俺様を見ちゃってるとか?」

自分の淫らな夢を棚に上げ、気まずい空気を茶化そうとしたが、幸村の顔色が赤からみるみる青醒めていくのが分かった。

「ごめん…旦那こういうネタ嫌いだよね。」

「いや…その、と、とにかく…風邪をひいてはいかぬから早く下を履けっ!…では、俺は鍛錬があるのでまたっ!」

ドタバタと煩く足音を立てて出て行くが、玄関先でドスンと音がしたので転んだようだが、妙な呻き声を上げながら遠ざかって行く。

「まさか……ね?」


****

「とうとう本性見せたかお前のdarlingは。」

「ダーリンって…、そんなんじゃないと思うんだけどね。」

どうせ隠しても妙に勘の鋭い政宗にはお見通しだからと、昨晩の夢から今朝の幸村の動揺っぷりを話した。

佐助は自分の予想がはずれいるのを願いつつも冷静な第三者の意見が聞いてみたかった。

「ま、外野からの見解としちゃ…、あのcuteな子犬ちゃんは、あんたを欲望の対象として見てるな。」

政宗にまで断言されてしまうと、そうなのかなぁと妙に納得してしまう。

「いいじゃねぇか、一度誘ってみな。」

「無理無理無理!旦那は学祭で女装したあんたにすらオロオロしてたんだよ?」

「おい猿……お前、まさかその格好で迫る気か?」

「だって……野郎のままでなんて気色悪いだろ?」

政宗は開店前でピンクゴールドのツインテにギンガムチェックに黒レースがあしらわれた制服風のメイド服で待機している佐助を見て、深い溜め息をつく。

「ま、そりゃ置いといて。アンタ、何だかんだでソノ気になってんじゃねーか。」

「いや、今だって俺様はノンケだって!付き合いたいのは女の子だし。」

ただ理想の子がなかなか現れなくってさぁ。と心底残念がってはいる。

「Ha!俺の前で建前はナシだっつっーの。」

「はは……や、でもさ、そうでありたいってのは本当だよ。」

抑えられない欲望が奥底に渦巻いているのは重々承知している佐助は、自分自身に言い聞かしているのだ。

「それじゃ、荒療治で男と付き合ってみたらどうだ?」

「旦那ぁ……俺様の話聞いてなかったの?」

「そんな無理やり抑えたっていつか綻びが出来るって前にも言っただろ?それなら早いうちに自分はどうしたいのか見定めて……覚悟決めろ。」

「……それも、一つの手だね。」


考えておくよ、と言ったとこで小十郎から開店の声がかかり、結論は出ないままとなった。
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