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□難攻不落
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朝まで散々揺さぶられ、胎内に大量の精を注がれた佐助は、力尽きて寝落ちした幸村の腕の中からそっと抜け出し、そそくさと草屋敷へ戻った。

湯を沸かす時間も待てない佐助は、裏手にある草達が任務後に返り血を洗い流すのに使う井戸の脇にしゃがみ、周囲に人気がないのを確認し、ガバッと裾を捲るとカピカピに乾き臀部にこびり付いた白濁を洗い流す。

「んんっ!」

水の冷たさすら感じてしまい、ブルリと身体を震わすと、胎内に残った大量の白濁が後孔より溢れ出てくる。

「もぉ…俺様が女だったら孕んじまいそうだよぉ。」

最奥まで注がれた幸村の子種は受精したいと言わんばかりに濃く、ネットリと粘ついて胎内に張り付く。

「んくっ、…も、や……っん、」

指で中に張り付く残滓を掻き出し、井戸の冷たい水で清める。

「はぁ………」


何度目かの排出で漸く全てを洗い流した佐助は、この後どのようにして幸村と向き合うかを思案する。

これで閨で何をすべきかは覚えたはず。

今なら嫁取りの話を切り出しても大丈夫かなぁ?

いや……結局男との契り方しか判ってないし、次はちゃんと女に化けた状態で指南すべきか。

つか、次もあるのかな?


などと悶々としていると、屋敷の方で門が開く気配を感じた。

表の門を開けるにはまだ早い時間。

となると、中から誰かが出立するしかない。

表の門から出るなんて……彼の御方しかいない。

慌てて表門まで駆けつけるが、一足先に主の姿は見えなくなっていた。

「幸村様なら、随分と神妙な面持ちで出て行かれましたが。」

門番も行き先は聞いていないようで、追いかけるにしても丸腰では万が一何かあっては守れない。

仕方なしに佐助は口笛を鳴らして鵺を呼び、先に追跡させる事にした。


「ったく、何考えてんだよあの人はっ!」

佐助は嫌な予感がした。

慌てて身仕度を整え追走すると、鵺が指し示す方角は甲斐に向かっていた。


「くっそ、何で馬とは言え陸路でこんなに早いんだっつーの!」

飛行忍具で障害物のない空路を使っているはずの佐助が、陸路を移動する幸村になかなか追い付く事が出来ない。

まるで戦場に向かうかのような気迫で、今の勢いなら幸村自身が天下を統べる事が出来そうとすら思わせた。





「おやかたさばぁぁああああっ!」

「何じゃ幸村ぁああ、朝から漲りおって!」

朝っぱらの来訪にもかかわらず、信玄はいつもの殴り愛で出迎えられた幸村は、すぐさまその場に土下座する。


「本日はお館様にお願いがございまするっ!」

「うむ、言うてみよ。」

「はっ!武田軍真田忍隊隊長、猿飛佐助を………」

「む?佐助がどうしたのじゃ?」

「そ…そ…某の、妻として娶りとうございまするっ!」

「はあぁっ?」

漸く追いついた佐助が乗り込むと同時に聞こえてきた衝撃的な申し出に、思わず声を張り上げる。

「おお、佐助っ!お前も来たのか。」

「や、来たのかとか言ってる場合じゃないしっ!つか、今……お館様に何て言った?」

「まあ落ち着け佐助、まずは幸村の話を聞いてみてはどうじゃ?」

信玄の手前、佐助は渋々表を伏せて幸村の後ろに膝まつく。

「はっ!お館様からの書状にございました試練、昨日佐助と乗り越えました。」

「ほお…して、男になった感想は如何に?」

昨夜の事を思い出した幸村は、首筋まで真っ赤にして少し口ごもりながらポツリポツリと報告をする。
「最初は…佐助がおなごである事実に驚かされましたが…男に変化し続けてまで己が為に仕えようとする心意気に、改めて惚れ直した次第。」

「え、惚れ直した?って、ええっ?」

「何だ佐助、気付いていなかったのか?」

「いやいやいや、だって旦那そんな素振り見せた事なかっただろ?」

「何を申すっ!常日頃より俺はお前しか居らぬと何度も申しておったであろうがっ!」

「そりゃ戦場の共でだろ?」

「幸村も色事に疎いが、お主も意外に疎いようじゃな。」

「え、まさか……お館様は、知ってて俺様にあんな無茶ぶりを?」

佐助は信玄の企みの裏にある真意が読めていなかった自分に怒りを覚える。

「じゃあ…竹姫様の嫁取りは…」

「おお、佐助も知っていたのか?だが大谷殿の御息女との縁談なら先日辞退したはず…」

「やっぱり…」

「無論佐助は今まで通り男として戦場で共に戦いまする。そして、お館様の天下泰平の暁には、正式に妻として娶りとうございますっ!」

幸村にとって嫁取りに身分違いだの、同盟の駒だのなんて考えは微塵もないのだろう。
その真っ直ぐさに、忍には持ち合わせていないはずの心が疼く。

「だ、そうじゃぞ佐助。」

信玄は意地の悪い笑みを浮かべながら最終的な決断を佐助に委ねる。

「嫁取り云々は置いといて、それよりも旦那は女の俺様を抱けるの?」

「はっ!破廉恥だぞ佐助ぇっ!」

昨夜の痴態が一気に蘇り声が上擦る幸村の口を人差し指でムニュリと押さえる。

「真面目な話、俺様を娶るなら跡取りを産ませないといけないんだよ。」

「そ、それは承知しておるっ!」

「でも、昨夜は女の俺様を抱けなかったじゃないか。」

「何だ、男の方で筆おろししたのか?」

「それはっ!……これからお前と協力して慣れてゆくから心配するなっ!」

どこまでも自分と共にあろうとする主に、佐助は遂に心の白旗をあげる。

「もう…本当に俺様がいないと駄目なんだからっ!」

「では、異論はないのだな?」

パァッと花が綻ぶような笑顔を向けられ、佐助は益々真実を切り出すタイミングを外してしまう。

「まずは一日も早くお館様に天下を治めて頂かないとな?」

「うむ、しかと励んでもらうぞ幸村ぁっ!」

「必ずやお役に立ちましょうぞお館さばぁあああっ!」

更に興奮した二人が殴り愛に入り、腰に力が入りきらない幸村がノックアウトする形で終息した。

「何じゃだらしのない。一晩中励んだ位でこのざまかぁ!」

「旦那はまだ初心者だからねぇ。」

「ならばこれから幸村を伽の後でもバテぬようバシバシ鍛えてやれいっ!」

「でも、旦那ってば男の俺じゃないと萎えちゃうんですけど…」

「うむ…そこは内助の功でお主が慣らしてゆくしかあるまい?」

「…それじゃあ、当分は本当の事教えない方がいいかな?」

「そうじゃな。お主の嫁取りが励みになれば、儂の天下取りが早まりそうだしのう。」

幸村にとっての人参的な扱いにされているが、忍が天下取りへの糧になれるなら何でも本望と言ったところだろう。


「ま、せいぜい美味しそうな人参に見えるよう頑張りますよ?」

「幸村にとっては今のお主が十分に美味いのだろうがな。」

「お館様の破廉恥!」

「英雄は色を好むもんじゃ。」

そんな二人のやりとりは、遠い意識の中にいる幸村には届いていないようで、顔はボコボコにされてはいるが実に幸せそうな寝顔をしていた。





その後、女体に変化した佐助には慣れる事もままならず、そうこうしている内にお館様の天下取りの方が先に見えてきていた。

「後は、どうやって嫁ぐのを回避すっかだな…」

自分の身体の事実をどう報せるか、佐助が更なる難攻不落な難題に頭を悩ませる日々はまだまだ続くのであった。
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