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□難攻不落
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「あのさ旦那…もしかして、男の方が興奮するの?」
我が主の認めたくない性癖に、佐助は少しだけ声が上擦ってしまう。
ただ単に女性に慣れていないだけかと思いきや、柔らかく幼い中性的な小姓ならまだしも、ゴツゴツと筋張り骨っぽい雄の身体である忍に欲情しているのだから本物かもしれない。
幸村が心酔する信玄も衆道を嗜むが、奥方も側室にも勤めを果たしている。
あくまでも男は嗜みだ。
「いや…わからぬ。」
「じ、じゃあさ、俺様が独眼竜の旦那に化けてみたらどうかな?」
「ま、政宗殿にぃ?や、いくら佐助の変化なれど想像がつかぬな…。」
「ここまで来たら試してみようって、ね?」
幸村が良しと言うのを待たずに佐助は再度煙玉を取り出し全身を煙に巻く。
「ごほっ…、さ、佐助ぇ?」
「Ha!情けない声あげてんじゃねーぞ真田幸村っ!」
「ま、政宗どの…や、こ、これには訳が有り申して…。」
佐助の変化が見事なのもあるが、どうにも単細胞否、真っ直ぐ故に目の前の独眼竜に本気で狼狽えている。
「アンタ…俺にまで欲情してるんじゃないだろな?」
隙だらけの幸村の下肢へ素早く手を伸ばせば、先程までの勇ましさはすっかりなりを潜め、掌の中で僅かに芯が残るばかりに萎えていく。
「急所を掴むなど卑怯なっ!何時ものように正々堂々と勝負なされよっ!」
「や…だから…そう言う意味で触ってるんじゃなくて。」
すっかり交戦モードに入った幸村を諫める為、みたび煙玉を取り出して煙に身を掴む。
「刃を交えずに逃げられるのかっ!」
「もぉ〜!少しは落ち着きなって。」
「さ、佐助?今しがた政宗殿がここに現れたのだ、お主は見ておらぬか?」
「だ〜か〜らぁ!俺様が化けるって言ったでしょ?」
本気で佐助の変化に気付かなかった幸村に、呆れるのを通り越して笑ってしまいそうになる。
政宗相手だと頭に血が登り漲ってしまうからか、下肢は性的な興奮が醒めてしまうようだ。
『んー、まあ独眼竜に欲情しないのが分かっただけでも成果有りかな?』
「佐助……その、手を…。」
うっかり元に戻っても幸村の陰茎を掴んでいたままだった佐助が、慌てて手を離そうとするが、幸村の掌が上から押さえ込んで動きを制してしまう。
「旦那、手ぇ離すからどけてくんない?」
「いや…暫し待てっ!」
「え……んん?……えぇぇえ?」
特に扱く訳でも無く、陰茎を包むように掴んでいただけのはずが、グングンと猛り質感を増してくる。
「これで分かったか……」
「何が?」
佐助は頭では分かっていても認めたくなかった。
認めてしまったら、自分に課せられた任務の遂行がままならなくなってしまう。
「俺は……今のままのお前に、欲を抱いてしまうようだ。」
これは任務なのに…旦那を男にする為にわざわざ我が身を女に化かして一芝居打とうとしたのに……
「ほんと…お馬鹿さんなんだから。」
それは、己にか幸村に向けてか…或いはどちらにも向けてか…。
「いっちょ前に忍誑し込むなんて…非道い御人だよ。」
降参とばかりに幸村の肩に顎を乗せて身を寄せた佐助は、幸村の腕が己の背と腰に回されてきつく抱き締められるが、その痛みすら甘く感じてしまい、されるがままにその場に押し倒された。