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□眠れる虎の育て方
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改めて甘味屋で逢い引きをしている間の旦那ってば……ちょっと見物だったね。
だってさ、あの旦那がだよ?団子そっちのけでそわそわそわそわしちゃって、俺様が茶飲んで視線外してる間もずーーっと穴が開くんじゃないかって勢いでこっち見てるし、目を合わせたら合わせたでぎこちなく視線逸らすし。
そんな初な反応されてどうしたらいいんだか……
「さ、佐助………そろそろ戻るとするか?」
「え、もう?」
「あまりのんびりしていると陽が暮れてしまうであろう?」
本当は早く二人きりになりたいんだってのが見え見えで、思わず吹き出しそうになるのを喉の奥でグッと堪えた。
俺様超優しくない?
「そうだね、そんじゃそろそろ戻りましょうかね?」
そう言えばパァッと表情を緩め、餌が貰えるんだって期待して無いはずの尻尾を切れんばかりに振ってるのが見える。
行きと違い、人気の無い裏道までは少し大股気味に歩く旦那が可愛くて、俺様もちゃーんと歩幅を合わせてあげる。
それにしても……背に合わせて脚も長くなったからか一歩一歩の歩幅が今までより大きくて合わせるのも骨が折れる。
このままもっと大きくなっちまうのかなぁ……
「佐助…………もうそろそろ、良いか?」
「駄目駄目!ほら、子供たちがそこに 居るだろ?」
「う、うむ……」
少しずつ横並びに歩幅を合わせて、手を繋ぐ頃合いを計っているとか!どこでそんな技覚えたんだろ?や、多分素なんだろうなぁ
あんまり焦らすのも可哀相だから、横並びで腕を振る時にわざと指先を擦らせてみたら、旦那ってばビクッて面白い位身体を跳ねさせちゃった。
「ん?どうしたの旦那?」
「あ、そ、その………うぅ」
わざと上目遣いで顔を覗きこめば、顔を真っ赤に紅潮させて喉の奥で低く呻いてる様が妙に生々しくて…………俺様の方が我慢出来なくなってきた!
「!!!な、さ、佐助ぇ?」
「もう誰も見てないから 大丈夫……ね?」
指と指を絡めるように手を繋いでみれば、素手から伝わる旦那の熱でジリジリと熱く痺れそうになる。
「あ、ああ………」
「本当に旦那ってば俺様なんかでいいんだ……」
「そうではないっ!」
「えー、じゃあ俺様とは遊びなんだーかなしーなぁー」
わざと棒読みで拗ねてみたら、旦那はすっごい力で繋いでいた手を引いて自分の胸元に引き寄せてそのまま空いてる方の手を背中に回してぎゅっと抱きしめて来た。
「なんか、ではないっ!佐助が良いんだ!」
「え……………?」
何だよ、そう言う事?……………あー、やばい
「本気に………しちまうよ?」
「そうでなくては困る」
もっと年長者の余裕で主導権握っておこうって思ったけど……
「後で泣き見ても知らないからな?」
「べそをかいて佐助の手を煩わしていた童ではないぞ?」
確かに、背に回した手は先程よりもはっきりと欲望が明け透けに感じられる。
「そうみたいだね。でもさ、お武家様な旦那の初めてが青姦なのはいかがかなーって」
「あお、かん?」
あ、そこまでは知らないんだ?
「お外で破廉恥な事するのをそう言うんだよ」
「そ、そうなのか?」
あはっ、抱き寄せられてるからか旦那の鼓動すっごいバクバクしてるのが伝わるや
「って、旦那にはまだ刺激が強過ぎかな?」
「だが………その、そんな邪な期待が無いと言えば嘘になるっ」
えぇええええ?あの、色気より拳と食い気の旦那が!?
「そっかぁ…………どうしよ旦那ぁ……」
「何がだ?」
「俺様も、なんだけど………」
「っ!!!!」
「ちょ、旦那っ!血!血ぃ出てるっ!!」
俺様が本音を漏らしたと同時に、旦那のすっと通った鼻から鮮血がタラリと溢れ出してきた。
「すまぬ………今日は刺激的な事が多過ぎたようだ」
「いいから早く拭えっての!」
折角美麗な旦那の顔が血に染まるのは戦場だけで十分だから、俺様の手拭いで綺麗に拭ってあげた。
こんなので本当に俺様とどうこうなりたいってのなら……少し本腰入れて手取り足取り教えるとしますかね?
そんな願っても無い企みをしているなど知る由もない幸村は、まだ佐助の温もりが残っていた手拭いに興奮し、出血を止めるのに難儀していた。