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□星ニ願イヲ2
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大きな笹の葉が街のあちこちに飾られる季節。
佐助は今年も短冊と団子を用意してこの日を迎えた。

「お、今日は七夕か。」

毎年叶わぬ願いを託しては虚しさばかりが残っていた七夕も、今年は違った。

「短冊も作っておいたから、旦那も願い事書いてね?」

「ああ。」

毎年毎年恨み節を聞かされた織姫と彦星のお陰か、佐助の隣には懐かしくも愛おしい主の姿があった。
あの頃二人で逢瀬を交わした山ではなく、佐助が住む小さなアパートのベランダに飾られた笹には、折り紙で作った色とりどりの飾りが飾られていた。

「どれどれ、旦那は何て書いたのかなぁ?」

「そう言う佐助は何と書いたのだ?」

「へへー、そんじゃ一斉に見せようか?」

「よし、それではせーのっ!」

テーブルの上に裏返しに置いた短冊を同時に返すと、それぞれの願いが綴られていた。

「何々、『旦那とずーっと一緒にいられますように。それと早く……』」

「あれぇ?ちゃんと声に出して読んでよぉ〜旦那♪」

頬を紅潮させ、佐助の願い事を途中で読み止めてしまった幸村に、佐助は楽しそうにニヤニヤと意地悪い笑みで顔を覗きこむ。

「そう可愛い顔して煽るな……」

「旦那の方が余程可愛いのに、本当にお莫迦さんなんだから。」

甘い口調で莫迦と言われると、このまま押し倒してしまいたい衝動に駆られる。

「そんじゃ旦那の願い事は…『もっと佐助と一緒にいられますように。そして………』」

「どうした?ちゃんと声に出して読んでみろ?」

「もう…いつの間にこんないやらしい事覚えちまったんだよ!」

「最初にいやらしい事を教えたのはお前であろう?」

今度は幸村の方が意地悪い笑みで佐助の顔を覗いて煽る。

「ったく、何百年前の事言ってんだか…。」

「昔も今も、俺の初めてはお前から教わりたいのだが……駄目か?」

「もう…嬉しい事言ってくれるんだから。」

ふっと目を細めた佐助がゆっくりと顔を近付けてくると、思わずゴクリと喉を鳴らして待ち構えてしまう。
が、幸村の期待に反して佐助の柔らかく艶めかしい唇は、幸村の頬に軽く触れて離れてしまった。

「狡いぞ、佐助ぇ」

「だってぇ……俺様からはこれが限界。」

「何故だ?別に好いた者同士であれば問題あるまい!」

「いや…これ以上したら俺様警察の厄介になるんだけど。」

「うっ……」

それを言われてしまうと幸村は無理強いを出来なくなる。

「旦那はさ、今いくつだっけ?」

「じゅ…11だ。」

「それで、俺様がいくつか知ってる?」

「確か、19になったな。」

「そう。俺様も18歳以上になっちまったから、旦那とイケナイ事したら捕まっちゃうんだよ。」

「それならば18の内に手をつけておけば良かったな。」

「んな事言ってぇ〜、精通も未だなんだから無理しなさんなって。」

「な、は、破廉恥だぞ佐助っ!」

二人は長い時を経て、漸く同じ時代に生まれ再び出逢えたまでは良かったが、この時代では戦国の世での身分以上に年の差が二人を阻んでいた。

「どうせならもうちょい年を近く生まれ変わらせてくれたら良かったんだけど。」

「そうだな、俺の方が先に逝ったのにまたもや後から生まれてしまうとはな。」

「ま、もう一度出逢えただけでも万々歳だけどね。」

「それもそうだな。」

志を貫き通し、何ひとつ悔いなく散った幸村も、自分の命で生き長らえさせてしまった佐助の苦しみを思うと今でも胸が痛む。
いくら余生があろうとも、幸村亡き世に佐助が生きる意味などなかったのだから……


「ま、今度は平和な世だし、順当に行けば旦那が看取る番だから…年の差もちょいと良いかな?」

「ああ…お前には辛い役割をさせたからな、今度は俺が看取る故安心せい。」

まだまだ世間的には子供なはずなのに、幸村には武人としての魂がしっかり宿したままだった。

「って事はさ、看取るまで…一緒に居てくれるんだ?」

「無論だ。前は共にあるのは願いではなく必然だったが……主でも忍でもない今世は、繋がりを保てるよう星に願いたくもなる。」

世間的には関わりなどない小学生と大学生が一緒にいては、佐助に良からぬ疑いがかけられてしまう。

「俺様も。早く旦那が俺様の彼氏なんだぞーって自慢したいんだけどね。」

「すまぬな、力不足で…。」

「旦那が悪いんじゃないよ。憎むべきは幼い子供に手出す輩だし。そいつらのせいで法の名の下に取り締まられちゃうんだから。」

「そうだな……」

「だから………」

早く、旦那の方が襲って
ね?と耳元で囁かれてしまえば、身長や体格差など物ともせず佐助を床に押し倒せば、今は未だ抱き付く格好にはなるが痩躯を抱き締めた。

「相変わらず体温高いね…」

胸元に押し付けられた頭をゆるりと撫で、包み込むように背中に手を回して抱き留める。

「早う……大人になりたいものだ。」

「俺様散々待たされて待つのは慣れてるから……焦んなくても大丈夫。」

笹の葉を揺らす初夏の生温い風と、幸村の体温で密着した箇所がほんのり汗ばむのを感じると、佐助は不快さどころか自分が生きている充足感で胸がいっぱいになる。

「お前の願いを叶える日も……近そうだぞ?」

「え………ちょ、えぇぇええ??」

子供の幼さで抱きつき密着していた幸村の下肢が、僅かながら欲望の兆しを見せのしかかった佐助の腹部に固い痼りがあたる。

「えっと……人が折角待つって言ったんだから………ね?」

「ならぬ。今宵は七夕、織姫と彦星に代り俺が佐助の願いを叶えてやるぞ!」

「う、嘘だろぉぉぉおお?」

幸村が身体を下にずらし、腹部の痼りを自分の下肢に性的な意味を持って押し当ててくるのに困惑しつつも、頭と背中に回した手を置いたまま拒む事など出来なかった。

二人がもつれ合う振動でテーブルから落ちた短冊に書かれた互いの願いは、星に願うまでもなく、己達の力で早々に叶いそうだった。


※二人の願い事は……まあ推して知るべしな甘ったるいお願いかと。
お互いに読ませて誘い受する短冊プレイ??

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