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□夏の恋はお疲れSummer
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「それで、それから結局はうやむやなままなのかよ?」

夏休み間近の放課後の教室で、今日も政宗は相談に乗っていた。

「まあね……だって、今の旦那はアレだし。」

「………ま、そうだな。」

いつもならば、休み時間毎に走り回り、放課後はいの一番で部活の練習に向かう溌剌とした幸村は形を潜め、休み時間は黙々と書類に目を通し、放課後のチャイムが鳴ると真っ直ぐ学校を後にしている。

「いきなり代理とは言え総大将を任されちまったからね。重責も相当だよ。」

「HA!しっかし武田のオッサンも何考えてんだかな。」

二人の師であり全国に支部を持つ武田道場総大将・武田信玄は、退院後も大事を取って一線から退き、まるで隠居してしまったかのように全権を幸村に託してしまった。

「一応俺様や他の幹部の人達も補佐してるけど、旦那は真面目だから辛いって俺にも言えなくて、全部自分で抱え込んじまって日に日に憔悴しちまってて……」

「それなら尚の事身体で励ましてやりゃあいいんじゃねぇか?」

かすがの先輩とのやりとりや、その後の幸村の豹変っぷりも政宗には報告したが、別段驚く様子はなかった。

「だからさぁ、俺様だってまだ半信半疑なんだから先走れないっての!」

あれだけ独占欲を剥き出しにされておきながら、佐助は未だ幸村が自分に向けている気持ちに自信が持てずにいた。

「あのなぁ………女子中学生じゃねーんだから『好き』って言葉聞かなきゃ納得出来ないのか?それ以上の言動されてんだろ?」

「そ、そりゃそうか知れないけどさー」

あの日、路地裏に連れ込まれて服越しに密着した身体や握りしめられた掌の熱さ、ギラツいた眼。

それらを思い出すだけで佐助は、所構わず体内に熱が燻り出してしまうようになっていた。

「あーー駄目だぁ、思い出すとドキドキっつーかムラムラしちゃう。」

「ばぁーか!んなトコで盛ってんじゃねえっての」

「しょうがないだろぉ………男なんて下半身は別物なんだからさ」

佐助はどうにか熱が下肢に集まらないよう、両手で自分の頬を軽く叩いて気を散らそうとする。

「ったく、真田の前で今の顔見せてやれよ?」

「………俺、今どんな顔してんの?」

「雄が欲しくて堪らない発情期の雌猫みたいな顔………ってとこか?」

「雌猫かよ!」

「あ、悪い悪い、雌猿か」

「それなら猫の方がまだ可愛気あるんだけど?」


政宗の読みは少なからず当たっていた。

佐助はあの日以来、幸村の体温を思い出しては毎夜己を慰め、頭の中では幸村に力づくで押さえ込まれて抱かれる夢想を繰り広げ、性具を使っての自慰に耽っていた。

胎内を蹂躙する固く無機質な物が、熱い幸村自身だったら………そう考えるだけで呆気無く達してしまう事も少なくない。


「とにかく、今は旦那が無事に総大将代理を務めあげられるよう補佐するので一杯一杯だから……」

「鬱憤晴らすのも補佐の内なんじゃねーの?」

「う……………っ」

幸村を慰める名目で抱かれにいく。などと言う夢想はとっくにしていたが、政宗からそうしろと背を押されてしまうと、自分だけで抑えてた欲が顔を出してしまいそうになる。

「ま、いきなり身体繋げなくてもハグ位してやりゃどうだ?」

「そ、そう……だよね。ハグくらいなら、大丈夫かな?」

政宗に掌で転がされているのは悔しいが、幸村を救いたい想いと、触れてしまいたい衝動は、此れ以上抑え切れそうになかった。
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