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□熱過ぎちゃって困っちゃう!
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「ぶはっ、旦那っ早く早く!!」
突然の雷雨に見舞われた幸村と佐助は、あと少しで予約していた宿だからと全身ずぶ濡れのままダッシュしていた。
「しかし…使いが済んだ後で不幸中の幸いだったな。」
「まあね〜」
わざわざ宿を取り遠征しているのは、二人の武術の師であるお館様からの頼まれ事の為で、交通の便があまり良くない場所ゆえ、日帰りでは大変だろうと使い先の方から用意されたのだった。
「風邪を引いたら大変だからさ、さっさと風呂に入っちまおうな。」
「ああ。」
びしょ濡れの二人はフロントでタオルを借りて軽く体を拭き、大浴場の場所を尋ねた。
「えっ、故障中?」
「申し訳ございません、本日大浴場のボイラーが故障しておりまして。」
「仕方ない、部屋の風呂を使えば良かろう。」
「そうだね。」
「もし宜しければ新館のお部屋をお使い下さい。其方でしたら本館のユニットバスより広いので。」
「そんじゃ、お言葉に甘えさせてもらおっか?」
「そうだな。」
思いがけず部屋をランクアップして貰った二人は、早く暖を取ろうと早足で部屋へと向かった。
「おおっ、広いな。」
「ほーんと、二人じゃ持て余しちまうね。」
寝室とリビングが分かれている広い部屋を軽く見渡して、エアコンの送風で冷やされて来た身体を風呂場に移した。
「んー、まあ広いっちゃあ広いかな?」
大浴場がメインな宿だけあり、基本的に部屋の風呂は一人用だった。
それでもトイレとは別で、浴室の奥にはシャワーブースが付いている分使い勝手は良さそうだ。
「それじゃあ旦那先に入っていいよ。」
「何っ?佐助はどうするんだ?」
「流石に二人いっぺんには狭いからさ、バスローブにでも着替えておくよ。」
それは建て前だ。
子供の頃なら気にもせずに狭い狭いと笑いながら一緒に入っただろうが、
今の佐助には出来なかった。
「こんなに身体を冷たくして意地を張るな。」
すっかり冷えてしまった佐助の両頬を、熱い掌が包み込む。
「だって、旦那は来週試合だろ?風邪なんて引かせたらお館様に顔向けできないっての。」
幸村の手から伝わる熱からか、急に触れられた動揺からか、佐助は頬が脈打っているかのように火照ってしまう。
「俺はめったに引かぬから大丈夫だ。」
あー、旦那の顔近いって!
変に緊張してきちまったじゃねーか。
黒々と長い睫にビッシリと覆われた瞳に覗きこまれると、吸い込まれそうでクラクラしてきてしまう。
「しのごの言わずに入るぞっ!!」
バサバサと躊躇いなく雨を吸って重くなったシャツやデニムを下着ごと脱ぎ捨てるて、男らしく前を隠さず浴室のカランを回す。
「湯加減は熱めで大丈夫か?」
「あんまり熱くしないでってば!!」
肌にビリビリくる位の熱湯を好むお館様に唯一付き合えるだけある幸村は、放っておくと風呂の湯をべらぼうに高くしてしまう。
「身体が冷えておるのだから少しは我慢しろ。」
「その熱さじゃあ、まず湯船に入れないから。」
仕方なく先にシャワーを浴びようと、幸村が背を向けた隙に素早く濡れて身体にまとわりつく衣服を脱いでブースへと入る。
ガラス張りだから透けて丸見えではあるが、ガラス越しと言うだけで幾分か安堵出来る。
やっぱり近過ぎるのは心臓に良くないなぁ。
いつから旦那を幼なじみ以上の感情で意識したんだっけ?
中1の時旦那が夢精をお漏らしと勘違いして半泣きしてた時?
それとも中2の夏合宿で二人して悪乗りした先輩に布団で簀巻きにされて、顔が近づき過ぎて唇くっ付いた時?
あれがキスだって旦那は気付いてなかったよなぁ。
つか、俺様とじゃ旦那の中ではカウントされない
んだろなぁ。
ぼんやりと自分が幸村を妙に意識してしまう原因を思い出そうとしていると、重たいガラス扉を開けて幸村がシャワーブースに入ってきた。
「あ、ごめんね先に使っちゃって。俺様出るから次どうぞー」
今にも肌が触れてしまいそうな空間が居たたまれず、慌てて浴室に移動しようとした佐助を幸村の逞しい腕が阻害する。
「ちょ、出られないから退けて?」
「折角久しぶりに二人で入るのだから一緒におれ。」
「や、ガキの頃とは違うんだからさぁ。物理的に窮屈すぎるだろぉ?」
「そうか?俺は窮屈なのも楽しいぞ?」
久しぶりついでに髪を洗ってくれとせがまれ、渋々ながら狭いシャワーブースで洗髪する事になった。
「旦那、もうちょっと頭下げてくんない?」
「こうか?」
去年までは佐助の方が高かった身長も、いつの間にか抜かれていた。
背や体躯は追い抜かれたが、まだまだ子供じみた部分が抜けない幸村を、どうにも突き放せないで言う事を聞いてしまう自分自身に佐助はげんなりとしてしまう。
「そんじゃあギュッと目ぇ瞑るんだよ?」
「分かっておる。」
子供扱いされたのが気に入らないのか、幸村は少し語尾を揺らしていた。
「あーあ、また石鹸で頭洗ってんでしょ?髪がギシギシ言うよ〜。」
「どうにもあのヌルヌルした液体が苦手でな。汚れが落ちてもまだあの滑りが頭に残っているように感じてしまう。」
「ちゃんと洗い流せば大丈夫だってぇ。」
長く伸ばされた尻尾のような後ろ髪も丁寧に梳くように洗い、頭皮を揉むようにマッサージをしながら洗えば、ふぅっと艶めかしい声をあげる。
「やはり佐助に洗ってもらうと心地良いのう。」
「そう?痒いとこはございませんかぁ、なんてね。」
傷んだ髪を軽く濯いでタオルドライをし、トリートメントを全体に染み込ませてタオルで巻いてあげた。
「おお、これなら湯船に入るのに邪魔にならないな。」
「毎日とは言わないけどさ、たまにはちゃんとヘアケアしないとね。将来大将みたいになるよ?」
「お館様に似るなら別に構わぬぞ?」
「……そう言うと思った。」
シャワーで程々に温まったが、まだ湯船に浸かって芯まで温まりたい佐助は、浴室へと移動する。
「旦那は湯船どうする?」
「俺も入るぞ。」
「そんじゃ先どうぞ。」
「いや、佐助の方が冷えておるのだから入れ。」
と、何度か押し問答している内に再び身体が冷え始めてしまい、佐助はクシュッと小さくくしゃみをしてしまう。
「そうだ、こうすれば良かろう!!」
ドプンと水しぶきを上げて湯船に浸かった幸村は、脚を大きく広げて自分の前に空間を作る。
「なぁ〜んか、嫌な予感しかしないんだけど?」
「?まあ良い、佐助!ここに入れば二人でも入れるぞ!」
「や、それじゃあ狭すぎるし!」
「大丈夫だ、お前は身体が柔らかいから多少折り畳めば入れる!」
ごねる佐助の腕を引っ張り、無理やり湯船へと引き込む。
大きく開脚した幸村の股座の間で、佐助は体育座りでどうにか収まるが、背中に幸村の肌が触れてしまうのは免れられなかった。
「ふう……!ちょ……だん、な?」
「?どうした佐助。」
や……この尾てい骨付近に当たってるの、アレ……だよな?
まあ狭いんだら仕方ないけどさぁ……その、妙に硬い感じが………って、もしかして、た、勃ってない?
「や……狭くない?」
「うむ、だが二人いっぺんに温まれて良かろう?」
「そ、そりゃそうだけどさ……」
わ、か、肩!肩に顎乗せて来たよ。顔近っ!!背中に胸板当たってるし……やっぱり勃ってる。
幸村の屹立した陰茎に尾てい骨を擦られ、このまま腰を浮かしたら挿れられてしまうのではないかとすら錯覚してしまう。
「どうした、佐助?顔が赤いぞ。」
「ん……も、温まったから…出ようかな?」
じんわりと芯を持ち始めた佐助の陰茎を悟られまいと体育座りで合わせた膝をキツく閉じようとすると、臀部も揺れて幸村の陰茎は益々硬さを増していく。
「まあ待てっ!もう少ししっかり浸かれ………んんっ?」
「うひゃっ!!」
徐に閉じていた両膝に手を置かれて左右に割り開かれてしまった佐助は、素っ頓狂な声をあげてしまった。
「膝がまだ冷たいではないか。少し開いて湯に浸けねばな。」
「や……っ、いいって…ばぁ…」
純粋に心配しているのだろうが、今の佐助にはありがた迷惑この上ない。
「と、とにかくっ!!俺様もう上がるからっ……あれ?」
すっかりのぼせ上がった佐助は、急激に立ち上がると湯あたりで視界に砂嵐が走る。
「佐助っ、佐助っ!!」
あー、このまま倒れたら旦那に勃ってるのバレちゃうなぁ。
醜態を晒してしまうのを気にしつつ、佐助はゆっくりと意識を失ってしまった。
「ん………あ、れ?」
「目が覚めたか?」
目覚めるとそこは宿のベッドの上で、ちゃんと寝間着に着替えさせられていた。
「俺様、倒れちまったんだね。」
「急に温めたからな。アイスを買ってきたから食べるか?」
「ん、ありがと。」
いつもと変わらぬ態度の幸村に、ホッとしつつも少し残念な気持ちになってしまった。
でも……旦那ってば何で勃ってたんだろ?
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「そんな訳でして、湯に浸かり某の腕の中でジッと耐える佐助はまことに可愛らしゅうござった。」
「SHIT!相変わらずチートな男だな。」
「押し当てるのみで堪えた鉄の意志を、少しは誉めて下され。」
散々旅先でのハプニングを惚気られた政宗は、忌々しいと言った感じで幸村を睨みつける。
「つーかいい加減抱いてやりゃいいだろがっ!!」
「いえ、佐助にはまだまだ自覚が足りませぬ故、期が熟すまでは辛抱あるのみかと。」
「そんな事言って、お前はいつから自覚してたんだ?」
「決まっておりましょう。初めて逢った時より、某はあやつを嫁にする気満々な子供でしたからな。」
「Ha!筋金入りの変態ってこったな。
「人聞きの悪い。一途と申されよ。」
「旦那ぁ〜、今日は天気いいから屋上で弁当にしない?」
「おお、それは良いな。」
「竜の旦那は?」
「俺は腹一杯で胸焼けしてるから遠慮しとくぜ。」
「そうなんだ?それじゃあ行こっか?」
「うむっ。」
仲睦まじく屋上へ向かう二人を自分の席で見送った政宗は、湯あたりでベッドにまで運んで着替えさせている最中に、幸村は散々佐助の身体を舌で舐ったと聞かされたのを思い出し、苦虫を潰したような顔になった。