short

□汚い日記
2ページ/2ページ


初めて好きになった女の子が、今日死んだ。自殺だった。

彼女を好きになって、彼女もまた、俺を好きになってくれた。心底嬉しかった。


彼女が死んだと、連絡があっても、俺ははっきり言って信じられなかった。タチの悪い冗談だと思いたかった。


彼女が最近元気がなくて、目の下に隈があったり、悲しそうに笑う事には気が付いていた。
だけど俺は何もしなかった。彼女が何も言わなかったからだ。何も言わないから、大丈夫なのだろうと、勝手に思って、きっと逃げていたんだ。


彼女の両親から渡された日記を見て涙が出た。彼女が死んだと聞いたときでさえ出なかったのに。
彼女の日記はボロボロで、時々ページが破られていたり、カッターで切り裂かれたページもあった。
最後のぺージには、俺と彼女のツーショット写真が貼られていた。確かこれは…去年の彼女の誕生日の写真だ。
彼女は頬を染め、幸せそうに俺の横ではにかんでいる。俺と彼女の指はしっかりと絡められていた。



不意に、日記の間に挟んであるものに気がついた。破られたノートの切れ端だろうか?
小さく畳んである。それを開いて、俺の止まりかけていた涙は勢いをました。



『私は幸せでした。幸村くんは幸せでしたか?』





小さな紙切れと、日記を抱きしめた。彼女は苦しかったはずだ。悲しかったはずだ。自分で自分を殺めてしまう程に。だけどそれでも、苦しくても、彼女は幸せだったと言ってくれている。
俺は彼女の異変に気付かなかった。気付こうともしなかった。それでも、恋人であれたことに、一緒に居られたことに、幸せを感じていた。




…手放せなかったのは、俺じゃないか。




「俺も、…確かに幸せだったよ」




忘れられないし、忘れたりしない。君のことを。





「好きだよ―――…」




最後に呟いたのは、世界で一番、愛おしい人の名前。











(私は幸せでした)
(俺も心から幸せでした)






企画サイト cueA様へ提出

20110925 マカロン蝶羅
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ