□愛の言葉を囁こうか
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藤本がサタンの落胤を引き取り育てると聞いた時は本当に驚きました。
まだ結婚もしてない藤本が、いきなり二児の父親ですか。それもよりによってサタンの子供の。
私は呆れて言葉を失った。






「メフィスト、すっげー顔してるぞ」

「貴方の馬鹿さ加減に呆れてたんですよ」

「は、何とでも言え」

「貴方は馬鹿です。私の想像を超える馬鹿ですよ」

「もう決めた事なんだ。お前が何と言おうが、俺はこの子達を守る。
この子達には何の罪も無いんだからな」

そう言って、スヤスヤ眠る二人の赤ん坊の頭を藤本は優しく撫でた。




狡いですね、藤本は。
普段はふざけてるのに、たまにこういう表情をする。
私、貴方のその顔に弱いんですから…。




自然と大きな溜め息が出た。

「…分かりましたよ」

「メフィスト?」

「どうせ止めたって聞かないんでしょう、貴方は」

「さすがメフィスト!話がわかるじゃねぇか!」


すると藤本は赤ん坊の一人を私に抱かせると、私の顔を見つめながらこう言った。


「じゃあよ、俺とお前で育てるか?この子達」










……………………はぁ?










「まぁ背は高いけど、お前なら女に見えん事もないぞ。
俺がパパで、お前がママってのはどうだ?」


この馬鹿が何を言い出すかと思ったら…。
どーゆー意味か分かって言ってるんですか!?
みるみる顔が赤くなるのが、自分でも分かりました。

「………本当に馬鹿ですね、貴方は」

「何でだよ!?名案じゃねーか……ってメフィスト、何か顔赤くねぇ?」

「赤くないです!」

「ハハ、可愛いとこあるじゃねーか」

「…何を!」

「ま、お前のそーゆートコ俺は好きだぜ?」

「…!?///」











――――…



あれからもう15年も経つんですね。
私は、あの時の貴方の笑顔が未だに忘れられないですよ。
雨が降る中、私は貴方の墓前で呟く。

「当時は口が裂けても言えなかったんですがね、今なら言えそうですよ」

今更言うなんて、私って卑怯でしょう?
貴方なら、いつものあの笑顔で笑い飛ばしてくれますかね。










あの日言えなかった「愛してる」を貴方に











(奥村くん、私はあなたのマミーなんですよ)

(何言ってんだお前……;)




 

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