不死鳥の部屋

□不死鳥伝説ーその鳥がはばたく時ー3章
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聖域につくと、すでに他の皆はすでに戦いに向かった後だった

十二宮を見上げるとそこかしこに激しい戦いのあとがみられた

倒れた沙織の傍らで、精いっぱい彼女を守っていたのであろう

執事の辰巳が竹刀を片手にかろうじて立っているといった状態だ

他に数人ついていたSPたちは雑兵のあまりの多さに倒されたのか、どこかにいるのか姿がみえない

「おばさま!!…辰巳さん、もう大丈夫ですよ!」

エスメラルダは沙織に駆け寄ると、持参した毛布の上に沙織を寝かせた

一輝とエスメラルダを見て安心したのか、辰巳の巨体がグラリと傾いだ

倒れる寸前で受け止めた一輝が近くに座らせると、唸るように願った

「お嬢様をかならずお救いしてくれ…」

そのまま気を失った忠実な執事に約束するように、2人は視線を合わせると頷きあった

「一輝!早くいってあげて!
 ここは私だけでも、これ以上おばさま…アテナに指一本触れさせはしません!
 それより…皆の小宇宙が…!!」

「分かった…行ってくる!君もくれぐれも気をつけて」

聖衣をつけた一輝が軽く抱きしめて額にキスを落とすと、胸元をキュッと握ってエスメラルダが囁いた

「お願い…必ず生きて帰ってきて?」

小さく頷くと一輝は無言のまま、十二宮へ続く階段へと走り出した

その背中を見送りながら、彼女は聖衣を身に付けた

カタン

後ろで音がして振り返ると、そこにはやわらかな表情の青年と引眉の少年が立っていた

「おや?貴女は…デスクイーン島のお嬢さんではありませんか?」

声をかけたのは青年、黄金聖闘士のムウであった

エスメラルダは、彼とは聖闘士になる以前、父が存命のころに面識があった

「ムウ!黄金聖闘士は何故アテナを裏切り、教皇に与したのです?何故?」

問いかける彼女にムウは沈痛な面持ちで沈黙を続け、そのまま宮の中へと姿を消してしまった

「悪意を感じない…どういうことかしら…」

呟く彼女に懸命に弁解するように訴えたのは少年、貴鬼だった

「皆が敵になったのではないんだよ
 ムウ様もアルデバランさんも老師も…皆本当はアテナの、皆さんの味方です!
 カミュさんも…氷河さんに成長して欲しいってそう思ってるのが伝わってきます!
 今の黄金聖闘士だけではこの後の戦いに勝てないだろうからって…
 他の皆さんだって、アテナに反逆を企てたわけではないんだよ!
 ほんとに一部の人だけなんだ……信じてあげてよ!」

「そう、ですか…」

そういいながら、彼女は小宇宙を高めた

いやつられて高まったと言った方がいいかもしれない

先ほどまで戦闘していた一輝の小宇宙が異常なほど高まっていくのだ

「貴鬼!?一輝の小宇宙が…高まっていく、いえ…高まり過ぎて…」

貴鬼は不安な彼女に伝えるべきか迷ったあと、呟くように感じたことを伝えた

「一輝は今、処女宮でシャカと戦って…五感を全て、ううん、六感まで絶たれたよ…」

「!!っでは一輝はもう…?」

「ううん、まだ七感だけで戦ってるよ」

そう言った貴鬼の表情は硬かった

その言葉に、愕然として彼女はガクリと膝を折ると祈り始めた

『お父様、お母様、私とアテナにどうか力をお貸しください
 お母様…もし彼が冥府の河へきても戻ってくるように伝えてください!
 …ああ、女神としての力を持たない今の私には何もしてあげることができない
 貴方すら倒されたというのに、聖闘士として力の劣る私だけでアテナを救うことなど…
 でも、貴方が生きていればきっと…きっと…そんな気がするの
 約束をしたもの…私と!必ず生きて戻るって!!』

一輝には、エスメラルダの祈る心が届いていた

『ああ…エスメラルダ…すまない
 俺は…約束を守ることはできないようだ…本当にすまない
 しかし…他の仲間のためにもここを突破しておかなければ…アテナと君は俺が守る!!』

その瞬間、すさまじい小宇宙の爆発と共に、一輝とシャカの姿は処女宮から跡形もなく消え去っていた

『一輝ーーーー!!』

彼の小宇宙の爆発と同時に声にならない悲鳴をあげて、エスメラルダは泣き崩れた

『嘘つき!嘘つき!生きて、生きて戻るって…約束したのに!!』

心の中で叫びながら、彼女は立ちあがった

まわり一帯を雑兵に囲まれていたのだ…
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