不死鳥の部屋

□不死鳥伝説ーその鳥がはばたく時ー2章
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トクン

トクン

お互いの鼓動が聞こえているんじゃないかと思うほど静かな時間が流れる

一輝はそっとエスメラルダの肩に手をおいた

もう片方の手で緩やかにまとめた髪にふれ、ゆっくりと指の背で頬をなでる

気恥ずかしそうに彼女が視線をあげると、熱をもった瞳にぶつかり軽く息をのむ

「…いっ…き?」

見たことのない表情に躊躇いながら彼の名を呼ぶ

「今日のエスメラルダは、すごく綺麗で…ずっと見ていたい
 いや、今日だけじゃないな
 君の笑顔はいつも俺にとって眩しいぐらい綺麗だった
 俺は、ずっと前から君が好きだ…
 君に負けないぐらい愛してるよ、エスメラルダ」

そう言いながら一輝は桜色の彼女の唇に、自分の唇をそっと重ねた

触れるだけの小さなキス

それだけで、エスメラルダの頬は淡く染まって潤んだ目からポロポロと涙が零れてきた

「すまん…いやだったか?
 どうしても…キス、したくなった」

やはり顔を赤くしたまま聞いてくる一輝に、エスメラルダはふるふると首を横に振ってみせた

「いや…じゃない……嬉しかっ……ンッ」

その返事を言い終えないうちに一輝は再びキスを落とした

そして啄ばむように額、瞼、目尻、頬、そして唇へといくつもいくつも…

まるでそこに彼女が本当にそこにいることを唇で確認するように

「一輝、嬉しい…ダイスキ」

さっき言えなかった続きをエスメラルダが呟くと、もう一度キスが落ちてきた

薄く開いた唇から探るように舌をいれると彼女の肩がピクリと震えた

震えを抑えるように首の後ろに掌をあて、細い腰を掻き抱くと強く抱きしめてさらにキスを深くする

息をするのも惜しむように、奥に縮まっている彼女を荒々しく絡みとっていく

お互い初めての大人のキスなのにまるで昔からそうしていたかの様に互いのすべてを伝えあうキス

次第にふたりの呼吸もあがってエスメラルダの肌は桃色に色づいてくる

視線を絡ませて唇をはなすと、銀色の糸がゆっくりつながってプツリと切れた…

一輝は大きくひとつ息をするとゆっくりと体を離した

「泣き顔も可愛いが、笑顔を見せてくれないか?」

エスメラルダは涙に濡れた瞳のまま、ピンクに染まった頬を綻ばせて花のような笑顔をみせた

いままで大胆にキスをしていた一輝だったが、その笑顔に急に赤面して額に手をあてる

「あーーーヤバイな、クソッ
 ごめん、エスメラルダ
 俺、暴走しすぎたな…」

頭をガシガシと掻きながら謝ると彼女の肩に額を押し当てて呟く

「俺も男だから…今の君とこれ以上2人きりでいると、我慢できなくなりそうだ
 この続きは、せめて君が結婚できる歳になるまで待つつもりだから
 これからは聖闘士としてはアテナを、俺個人としては君を一生守らせて欲しい
 もう、俺は二度と君を失いたくないんだ」

その言葉を嬉しそうに聞いたエスメラルダは、彼の額にキスをして答えた

「それじゃあ私は、兎座の聖闘士としてアテナを守り
 女神二ケとして正義の勝利と世界の平和を守るわ
 だけどエスメラルダ個人としては、貴方と貴方の大切なものすべてを守らせてちょうだいね」

2人きりの大切な約束

額をくっつけあって微笑み合う若い2人

見ていたのは夜空の月と星たちだけ…


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