不死鳥の部屋

□不死鳥伝説ーその鳥がはばたく時ー3章
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そのころの一輝達は白銀聖闘士達との戦いを経て、様々な事態の元凶を知ったばかりだった

聖域の教皇がすべてに関わっているらしいと…

エスメラルダが城戸邸へ来て三日後、沙織たちが聖域へ出向いて事件は起きた

話し合いをしたいと思っていた沙織は教皇に会うこともなく矢座のトレミーの放った矢に倒れたという

矢を抜くことができるのは元凶と思われる教皇のみ…

更に黄金聖闘士がアテナを裏切ったとの情報が入り、事態は緊迫の度を増した

今回、アテナには青銅聖闘士しか同行していない

しかも紫龍、氷河、星矢、瞬の四人とあとは一般のSPと使用人たちだけである

気を利かせた沙織たちによって一輝とエスメラルダは城戸邸の守りとして日本に残っていた

まさか黄金聖闘士がすべて敵になる事態になるとは沙織も思ってはいなかったのだ

連絡をうけ、一輝はしまったと舌打ちをし、エスメラルダは自分のふがいなさに顔色をなくした

「エスメラルダ、俺は聖域へ戦いに行ってくる
 アテナと、弟や仲間の命がかかってる」

自分だけで現地へ飛ぼうとした一輝の腕をエスメラルダはしっかりと両手でつかんだ

「私も行きます!
 やはり私がおばさまの傍にいるべきだったのよ!
 聖闘士としての力は貴方達には及ばないかもしれないけど
 せめて倒れたおばさまをお守りするだけでも私にさせて頂戴!」

涙を浮かべながらも強い瞳で訴える彼女を置いて行くことは彼にはできなかった

第一、彼女も聖闘士であり、アテナに勝利をもたらすといわれる勝利の女神なのだから…

「わかった、一緒に行こう…アテナをたのむ!」

2人は聖衣箱と最小限の荷物だけを手に取ると、城戸家の所有する一番速い飛行機に乗り込んだ

通常の旅客機に比べ、何倍も速く着くとはいっても移動する時間がもどかしい

隣のエスメラルダに目をやると膝の上で固く握った手がカタカタと震えているのがわかる

「アテナなら大丈夫だ…皆がついている
 あいつらはああみえて頼りになる奴らだ
 俺たちが行くまでにすべて片付いているかもしれないさ」

彼女の気持ちを軽くしてやりたいと、彼にはめずらしく仲間を褒めて明るく笑う

手を握ってやると小さく頷くが、その手はかなり冷たい

女神である彼女にはもしかしたら現地の状況がなんとなくわかっているのかもしれない

「勝利の女神でありながら
 父をひとりにさせたくないばかりにアテナの傍を離れ
 聖戦の時にも女神としての力をつかえず
 今もまた、あなたと会えたことが嬉しくて
 アテナに同行せずに日本に残ってしまったわ
 私、どうして大切な時に役にたてないのかしら…
 我儘すぎるんだわ、きっと…」

冷えた指先を少しでもあたためてやりたくて、握った手の甲に小さなキスを落とした

「今からでも大丈夫だ
 俺と一緒に皆とアテナを救って、日本へ帰ろう」

肩を抱き寄せると、エスメラルダは頭を一輝の肩に乗せた

そのまま髪をなでながら聖域までの時をすごした
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