不死鳥の部屋

□不死鳥伝説ーその鳥がはばたく時ー2章
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エスメラルダが城戸邸についた翌日、彼女の歓迎のささやかなパーティーが開かれた

沙織は彼女にもドレスを作って用意していた

しかしエスメラルダはそれを着てパーティーに出ることは丁重に断っていた

「とっても似合っているのにもったいないわ」

心から残念そうにいう沙織だったが

「お気持ちは嬉しいですし、女ですものホントは着たいのですけど
 ほら、パーティーには仮面をつけて出席しなければいけませんから…」

苦笑して理由を話すと、そういえばそうだったわと納得してくれたようだ

「だったら、あとで一輝にだけでも見せてあげるといいわ
 せっかくあなたのために似合うドレスを作ったのだもの
 それがいいわ♪そうなさいな!ね?」

キラキラと瞳を輝かせる沙織に押し切られるように、あとで着て見せることを約束してしまった




パーティーで改めて一輝は仲間たちに彼女を紹介した

但し、彼女の本当の素情については沙織とも話して言わないことにしていた

皆は一輝の大切な少女がどんな顔なのかとても知りたがっていた

さすがに仮面を外すわけにいかないエスメラルダは、思い出したように笑う

「ふふ、私の顔は皆さん多分ご存じですよ?」

それを聞いて一同不思議そうな顔をして顔を見合わせる

「いや、お会いしたことはなかったはずだが…」

代表して紫龍が疑問を口にすると、とたんに一輝が居心地が悪そうに彼女の言葉を遮ろうとする

「いや…まぁ、それはいいじゃないか!」

それを軽く制して瞬の後ろに回り込んだエスメラルダは瞬の肩に両手を置くとにっこり微笑んだ

「私の顔は、こういう顔ですわ♪」

嬉しそうに声をあげて笑うエスメラルダと沙織

しまったと言わんばかりに額に手をあてて天を仰ぐ一輝

「え?え?なに?僕がどうしたの?」

状況が理解できずにしきりに兄とエスメラルダを見比べる瞬

その瞬の顔とエスメラルダを見比べて、納得したのは他の3人だった

3人は次々に一輝の肩や背中をポンポンと叩く

一輝の肩に腕をまわした氷河はニヤリと笑うと一輝の顔を覗き込んでからかう

「お前、ブラコンだブラコンだと思ってたらあれか?
 彼女に似てる弟だから余計可愛いってやつなんだな?
 ククッ…可愛いとこあるよなーーっとあぶねぇ」

氷河は一輝の拳をひょいと避けて紫龍の後ろに逃げ込んだ

「え?僕にそっくりなの?ほんとに?」

自分を指さし、後ろにいたエスメラルダを振り返った瞬は驚きの声をあげた

「そうなのよ、髪の色や目の色は違うんだけどね
 はじめて会ったときなんか、一輝もびっくりしてたわ
 よっぽど弟さんが可愛かったのかよく話も聞かせてもらったの
 お会いできて嬉しい♪」

心から嬉しそうに言うエスメラルダのまわりを、珍しそうにうろうろしていた星矢

思わず思っていたことが口をついて出てしまった

「しっかし、瞬にそっくりならかなりの美人だよなぁ
 なぁなぁ、ほんとに一輝でいいのか?
 こいつかなり偉そうだしブラコンだけど…」

言ったあとにしまったと思った時には遅すぎた

今度はしっかり一輝のゲンコツが頭に直撃して頭を押さえてしゃがみこんでしまった

「あら私、一輝でいいんじゃなくて一輝がいいんです」

ためらうことなく言い放ったエスメラルダに周りの方が恥ずかしくなる

一輝は頭から湯気でも出るんじゃないかというぐらい真っ赤になってテラスへ出て行った

そんな彼を嬉しそうに見たエスメラルダは気にした風でもなくそのまま沙織と歓談をはじめた

取り残された男たちは顔を見合わせて苦笑いすると

「あーあ、からかうつもりがからかわれたかなぁ」

なんて言いあいながらパーティーの料理を楽しむべく四方に散っていった

「…俺、春麗に電話かけてこようかな…」

紫龍はいそいそと廊下へ出ていった

昼にはじまったパーティーはそのまま夜まで続いた
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