戦国BASARA

□キミの幸せ祈るコトバ
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「は……」
小十郎は思わず頭を抱えた。
今朝呼び出された理由も、それで合点がいく。
長年仕えてきた伊達家の嫡男を手籠めにした、仇なす従者と思われても不思議ではない。
「ま、政宗様、なんということを…っ!」
『なぁ小十郎。親父のヤツ、お前をどうこう…なんて言っていたか?』
「は…、言われてみれば特には」
政宗からのカミングアウトが衝撃的すぎてすっかり飛んでいたが、確かに輝宗からそんな話は一言も出なかった。
言われても、不思議ではないのに。
『もし親父が反対したり小十郎に対して不当なことをしたなら、俺は伊達を捨てるつもりだって言ったら、親父に小十郎と一緒にいて、幸せかって訊かれた。俺はもちろん、滅茶苦茶幸せだって答えたぜ。したら親父、俺が幸せならこれ以上のことはないって言ってくれた』
跡取りなら、小次郎もいることだし!と政宗は朗らかに笑っていた。
本来なら嫡男である政宗が跡目を継いで更に跡目を残すべきであろうが、輝宗は、それを強いなかったと考えていいだろう。
輝宗はきっと、戦国の世の政宗を思っての決断だったのだと推測出来る。
今生では母も弟も戦国の記憶はなく、二人は問題なく政宗の良き母、弟であるが、それが時折、政宗に影を落としていることを輝宗も小十郎も知っている。
輝宗の、政宗の幸を願う気持ちには並々ならぬものがあることも小十郎は痛いほどにわかっていた。
だからこその言葉であったのだろうと小十郎は思う。本当に反対していたなら、呼び出されたときにピシャリと言われていた筈だ。
今朝の呼び出しは、もしかしたら二人が上手くやれているかどうかの抜き打ちチェックだったのかもしれない。
政宗が不利になるなるようなことは言っていないし、問題はないと思うのだが、明日また顔を合わせるのかと思うと恥ずかしさや申し訳なさで、小十郎は消え入りそうな心地だった。

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