戦国BASARA

□愛情 for you
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その虚弱そうな作家先生とは、元親の旧友のことを指している。
名は毛利元就、生業は推理小説作家だ。
中学の同級生、高校も大学も同じという腐れ縁で、このカフェを構えた頃から、ちょくちょく顔を出してくれている。
今でも三日と開けずに顔を合わせているが、そんな二人にも唯一顔を合わせない期間があった。
それは、元就の締め切りが間近のとき。元より神経質な元就の、真骨頂といっても過言ではない時期なのである。
友人はおろか家族すら家にあげず、関所越えを許される人物は各出版社の担当のみという徹底ぶりだった。
そんなわけで、二人はここ何日も会っていなかった。
「今執筆中の新作が煮詰まっちまってるんだと。このままいくと落としちまうって、さやかが言ってた」
「え、それってまずいんじゃないか!?」
「ああ、まずいな。さやかにゃ逐一情報を流してもらってるけど、どうにも雲行きが怪しいんだ」
「そりゃあ、顔出せなくても仕方ないな」
「だが、最後に連絡が来てからもう四日、なんっの連絡もねぇ。俺はもう、心配で心配で……」
「御馳走様、マスター」
「あ、有り難うございましたー!」
テーブル席にいた一組のお客が店を出ていく。
食べ終わった皿とカップをトレイに乗せたまつが、クスクス笑いながら戻ってきた。
「オーナー、毎日のようにその話をなさるんですよ。徳川さんも、なんとか言ってやって下さいな」
「はは、愛されてるんだな作家先生は」

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