戦国BASARA

□風邪っぴきの恩返し
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そこまで言って、小十郎は喋りすぎたとばかりに慌てた様子で口を押さえたが、覆水盆に返らず。政宗はしめたとばかりにニヤリとした。
「なんだ小十郎。お前なかなかの策士じゃねぇか」
「折角頂いた大役を、自分の力不足で潰すのだけは嫌だったんです」
守役に就いたときの心境を、初めて聞いた。
小十郎は顔を赤くして罰が悪そうに天を仰いでいたが、政宗は惚れ直すぐらいでは足りないくらい、胸を振るわさる言葉だった。
謹厳実直が服を着て歩いているような目の前の男は、いつも直球の言葉で政宗の心の深い部分を的確に拐っていく。
それが確信犯でない辺り、ずるいと政宗は思うのだ。
「っくしゅ!くっそ、ヤりてー…、っくしゅ!」
「発言も、ご自重なされよ政宗様っ!」
ぴしりと撫で付けられた髪が解れそうなくらいの勢いで怒鳴られて、政宗は大口を開けて笑い転げた。
政宗の直球の言葉も小十郎の心を騒がせていることを、本人は知らないでいたのだった。


<了>

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