戦国BASARA

□風邪っぴきの恩返し
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「ああ、風邪を召されているのですから大人しくしていて下さい」
「Shit!」
渡されたティッシュで豪快に鼻をかみながら、政宗は鼻息も荒く舌を打った。
「鬼の撹乱とはこのことですな。さ、覚めないうちに食べて、今日は早く休まれて下さい」
「くっそ…、さっさと治す。んで襲っちゃるからな。覚悟しろよ小十郎!風邪引いてたんじゃ、キスも出来やしねぇ」
ぶつくさと独り言のような文句を垂れながら、ポトフをしゃくる政宗を見つめる小十郎の瞳に深い慈愛の色が滲んでいたことを、政宗は気付いていなかった。
「ガキの頃、風邪ひく度にポトフ作ってくれたよな」
「そうでしたね。まぁ、風邪を召されたとき以外でもねだられましたが」
給食でポトフを食べたこと、それが美味しかったことを伝えたら、数日後の夕食に小十郎が作ってくれた。
それが給食で出されたものより何倍も美味しくて、頻繁にせがんでは作ってもらった。
「一体、何処で覚えてきたんだ?親父は和食党だったろ」
「片っ端から料理本を読んで作って、研究しました」
「そんなことしてたのか」
慎重な小十郎のこと、主の息子にぶっつけ本番の手料理を出すなんてことはしない。しかし、日々の激務の中からそんな時間を捻出していたとは知らなかった。「俺も、気に入られようと必死でしたから。育ち盛りな男子相手なら、胃袋掴めばこっちのものだと思いまして」
「おい、ちょっと待て」
はにかんだような表情を作った小十郎を、政宗は不審げに見返した。
「もしかしてお前、そんな小さい頃から俺のこと狙っていたのか?」
「い、いえ!懸想致しましたのはもっと後ですから。…当時は守役を任されて、なんとかして正宗様に気に入られようと必死で」

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