戦国BASARA

□風邪っぴきの恩返し
4ページ/8ページ

「ああ。今日さ、まつにこのマスクを貰ったんだ。鼻のところにスポンジついてて、菌が外から入ってこない設計になってるんだが、お前花粉症だろ?丁度いいなって思って」
「政宗様…」
小十郎は感極まった様子で、渡されたマスクを見つめていた。
マスク一つで大袈裟な、と内心思ったが、それでも従順すぎる従者を政宗は感慨深く見つめた。
初めて出会ったときから小十郎は従者であり家族であり、今は最愛の恋人として常に政宗の支えとなっている。
今日のように風邪を引いたと言えば手厚く看病してくれ、試験前となれば夜食を作ってくれて、毎日手作りの弁当を持たせてくれる。
今日のまつの姿を見、今更ながら自分はしてもらっているばかりで何も返していないことに気付いた。
渡したマスクは、そのことに気付いた今の瞬間で、出来ることをしたまでの話だ。
これだけでは足りないと、政宗は思う。
風邪を引いていては家事を手伝うことは難しいし、まずそんなことをしようものなら小十郎が許さない。
小十郎は政宗に遣え、尽くすことこそが己の役目であり喜びと感じているような人間なので、恩返しなど必要ないと言われてしまうかもしれないが、それでも政宗は気持ちを形にして返したかった。
「マスク一つにそこまで感動するこたないだろ」
「いえ、政宗様からの頂き物なれば!有り難く使わせて頂きます」
使わずに神棚にでも飾られそうな勢いだなと、政宗は苦笑した。
「腹減った。飯にしようぜ」
「では、今すぐに用意致します」
小十郎は政宗を座らせると、目の前に手際よく夕食を並べていった。
ワイシャツの上からエプロンをかけた姿も、大きな体躯をもろともせずに、てきぱきと働く姿も最高に男前で、政宗は飽きることなくじっと見つめていた。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ