戦国BASARA

□風邪っぴきの恩返し
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その様に松永は気を良くしたのか、政宗が読み終わるなり手を叩きながらにやりと笑った。
なんだか試合に勝って勝負に負けたようで、政宗はむっつりと押し黙ると、ゆっくりと教科書を閉じた。





政宗は下校した足で、掛かり付けの病院へ向かった。
診断結果は鼻風邪だったので一安心だったが、大きくなってからは滅多に引いていなかったので、少々へこんだ政宗であった。
「ただいま」
「政宗様!」
帰宅するとワイシャツにエプロン姿の小十郎が、慌てた様子で飛び出してきた。
「なんだ小十郎、もう帰ってたのか」
「留守電のメッセージを聞いて、今日は定時で上がって参りました。で、診断結果はっ」
「ただの風邪だってよ。花粉症じゃなくて良かった…」
言うや否や、小十郎の大きな掌が政宗の額に当てられた。
「熱はないようですね」
「ん…、ひき始めだって。てか、風邪くらいでんな慌てなくたって」
「何を仰います。引き始めが肝心なんですよ。今日は早く休まれた方が宜しいかと」
「おお…、て」
キッチンから漂ってくる美味しそうな香りに、政宗の嗅覚が反応した。その香りに引き寄せられるように、政宗の足が動く。
「ポトフ…!」
鍋の中を見た途端、思った通りだとばかりに政宗の瞳が輝いた。
「政宗様の好物をと思い作ったのですが。風邪を引かれたなら丁度良かったです」
くつくつと煮込まれるポトフに鼻をヒクつかせる政宗の姿に、小十郎が目を細める。
「あ、小十郎。忘れる前に」
鍋に張り付いていた政宗だったが、病院帰りに購入してきたものを思い出して放りっぱなしになっていた鞄を漁ると、それを小十郎に差し出した。
「俺にですか?」

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