戦国BASARA

□風邪っぴきの恩返し
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「はいはい、そこまでですよ」
その間に割って入ったのは、まつだった。
「はい、伊達君」
まつが政宗の前に差し出たのは、使い捨てのマスクだった。
「犬千代様が酷い花粉症ですから、いつも持ち歩いているんです。使って下さい」
「助かる…、Thank You.」
装着したマスクの鼻の部分にはクッションがついていて、外気がより侵入しづらい設計になっていた。
流石の良妻振りに、政宗は感心しきりだった。
「まつは気が利くなぁ」
「犬千代様のためを思えばこそでございますよ」
「まぁ〜つ〜!」
「犬千代様ぁ〜!」
これがなければ手放しに讃えられるものを、と政宗は苦笑いだった。
「相変わらず夫婦宜しくな二人だな」
「ああいうのをおしどり夫婦と言うらしいぞ」
「へぇ、物知りだねかすが」
「騒いでないでさっさと席につきなさい」
授業開始前のざわつきを一蹴し、教壇に立ったのは担任であり学年主任の松永久秀だ。じろりと睨まれたが、その視線は何処か怪しげな笑みが含まれているような気がして、政宗は居心地の悪さに身動いだ。一年生の頃からの担任であるが、二年目を迎える今でも政宗はこの教師が苦手だった。
「さぁ教科書27頁から。開きなさい」
教師の立場とはいえ、この偉そうな口振りが好きになれないことにも一因していた。
「伊達」
政宗が教科書を開けていないことを目敏く見つけたらしい。
しかし、これしきのことで狼狽える政宗ではい。マスクのせいでだいぶくぐもった声だったが、流暢な発音で指定された英文を読み上げてみせた。
「excellent.」

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