戦国BASARA

□お互い様
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一瞬で高鳴る心臓の音に、政宗は思わず頬を赤らめた。
生娘でもあるまいし、と心中で突っ込んでしまう。野菜に嫉妬したり体臭にときめいたりと、まさかと思わずにはいられない自分の感情の波に振り回されてばかりだ。
「政宗様、ご覧下さい」
ふいに差し出されたのは、藤籠に山盛りに入れられた野菜達。
いつも通り艶やかで美味そうな野菜達に変わりはないが、それが何と言うのだろう。
「今年もよく育ちました。これで、勝鬨の足しにもなりましょう。武士は身体が資本ですからね」
政宗は差し出された野菜と、小十郎の顔を交互に見やった。
野菜と触れ合ってるとき、小十郎の表情が柔和になるのはこれが理由だったのか。
戦場では有能な右目だが、日常に戻っても目の前の男は自分の右目であり続けていた。
以前、武田信玄に言われた言葉を思い出す。
稀有な家臣であるとは常々感じていることであったが、こんな部分にまでとは思っていなかった。
この男はどこまでも軍師で、どこまでも己の片腕だった。
そのことを再認識した途端、政宗は小十郎の逞しい胸に飛び込んでいた。
「ま、政宗様っ!」
折り重なるようにして、叢の上に倒れ込む。
小十郎が上手く庇ってくれたおかげで政宗は上手い具合に何処もぶつけずにすんだが、一方の小十郎は強かに背中を打ち付けていた。
「何をなさるんですか、突然…。危ないでしょう」
「bag it!好きにさせろ」
「無茶苦茶仰いますな…」
胸を締め付けられたような気持ちを御しきれず、思わず目の前の恋人に突進してしまった、とは口が裂けても言えない。
胸元にぴたりと張り付けた耳から、小十郎の溜め息混じりの声が響き伝わってきて、その僅かな振動の心地好さに政宗はうっとりと目を閉じる。
「政宗様、その」
「なんだよ、まだ何かあるのか」
「いえその…、農作業で汗をかいております故」
「No problem!心配すんな、寧ろwelcomeだ」
言って、政宗は肺一杯に空気を吸い込んだ。

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