戦国BASARA

□束の間願事
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小十郎は構わずに、大きな掌で政宗の頬を包む。
梵天丸と呼ばれていた幼少期から仕え、唯一無二の主と誓いを立ててその成長を見守ってきた。竜の右目と呼ばれる今に至るまで多くの困難や紆余曲折があったが、それらを乗り越えての「今」を手に入れた。
その「今」があるからこそ、こうして回顧し得るのだ、と小十郎は実感する。
だがこの実感は、明日にも失ってしまうかもしれない儚さを孕んでいた。
確かなものの方が、ずっと少ないご時世である。
今日を生きられたことに感謝し、また明日へと命を繋いでいくのだ。
小十郎は暫く寝顔を眺めていたのだが、気が付けば己の意思とは関係なく涙を溢れさせていた。
溢れては己の頬を伝い流れていく熱いものを感じながら、小十郎は胸元深くに政宗を抱き込んだ。
触れた箇所から伝わる温かさがただ愛しくて、小十郎はただ声を殺して泣き続けた。
この体温も呼吸も、何一つ失いたくなかった。
唯一無二の主と巡り会えたこと、そして今この時を共に過ごせる奇跡に、ただ一心に感謝を捧げる。
これからもずっと、永劫いられたらと願わずにはいられなかった。


<了>

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