戦国BASARA

□party closing
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だが、その心の内には拭えない仄暗さが去来していた。
「どんな勝ち戦だって、人は死ぬ」
唸るような呟きに、小十郎の手が止まった。
「分かってる。だが」
「政宗様」
「討死したやつの両親が、さっき俺を訪ねてきた。責めにきたんじゃない、息子は伊達軍のために命を捧げられて本望だった筈だと礼にきたんだ」
そこまで一息に吐き出し、政宗は背後の右目を振り返った。
「手塩にかけて育てた子を戦で亡くしたというのに、感謝を述べる親がいるのか」
「政宗様」
「去り際、母親の背中は酷く震えていた。子が死んで喜ぶ親などいやしない……」
政宗は、意思とは関係なく震えてくる己の肩を庇うようにして掴んだ。
「もっと強くなりたい。もっと強くなって、民がもうこんな辛い思いを…っ」
「政宗様」
「もっと……っ」
「政宗様!」
「っう、ん…っ」
政宗の慟哭を遮るような一喝が湯殿に響き、政宗は有無を言わさぬ力で引き寄せられて荒々しく口付けられた。
口唇を割って忍び込んできた舌先に絡め取られ、政宗の二の句は小十郎の腹の中へと消えてしまう。
代わりに聞こえてくるのはくぐもった甘い吐息と、舌を絡め合う粘着質な水音だった。
「少しは、落ち着かれよ政宗様」
「っ、随分と強引な黙らせ方だな…」
「失礼を御許し下さい」
「いや…、俺こそクールじゃなかった」
政宗は、身体を翻す。
「政宗様、貴方様がここで振り返ることも立ち止まることもあってはなりません。前を向き、進むことこそが討死した者達への餞にもなりましょう」
力強い小十郎の手が再び動き出し、政宗の背中を洗い流していく。
熱い湯と暖かな小十郎の体温を背に感じ、政宗は徐々に気持ちを落ち着かせていった。

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