戦国BASARA

□春風翔る
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上手く抜け出してきたつもりだったのに、と政宗は心中舌打ちしたが、年期の入ったお目付け役をそう簡単に煙に巻けやしない。
「こんな日に、お小言なんて野暮なことはなしだぜ小十郎。見てみろよ」
政宗は真っ直ぐに小十郎の目を見つめてから、次いで眼下に広がる奥州の町へと視線を向けた。
「待ちに待った雪解けだ。それを見ない手はないだろ」
「む…」
小十郎も今さっき政宗が見た光景を目の当たりにし、その言い分もまた然りと思った様子だった。
心中ほくそ笑んだ政宗は、小十郎に自分の隣に腰を下ろすように告げた。
「まったく…。今日だけですぞ、政宗様」
「はいはい」
小十郎が腰を下ろせば、計ったように風が吹いた。
政宗は寝転んだまま、吹き抜けていく風の心地好さに身を委ねている小十郎を見上げた。
春を迎えれば動き易くなる反面、忙しくもなる。
政宗は直近の政務を考えながら、寝返りを打った。
「政宗様、斯様な場所では如何なものかと思いまするが」
「野暮なこと言ってんな。誰も来やしねぇよ」

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