戦国BASARA

□二人きり
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「あ、小十郎そっちそっち」
「ああすみません」
「よっと……」
火鉢の前に、二人並んで腰を掛ける。
取っておいた高級な酒を開け、政宗はご機嫌だ。
「寒くありませんか?」
「ん、ダイジョブ」
寒くないようにと襟巻きや厚手の着物を着せたはいいが、風邪を引きやしないか、少し心配な小十郎だった。
火鉢の上で餅を転がしながら、除夜の鐘を聞く。
「今年も終わりますな」
「ああ」
瞳を閉じ、聞こえてくる除夜の鐘を噛み締めるように聞いている政宗の、鼻梁の高い横顔に小十郎は見惚れる。
政宗が日ノ本筆頭となり、一気に忙しくなった二人だったが、小十郎は年の瀬はどうしても二人で過ごしたいと思っていた。
特別なことはせず、ただ二人で静かに年を越す、そんな時間がほしかった。
「ありがとうございます政宗様。まさか、叶えて下さるだなんて思ってもいなかった」
すると政宗は無言で身体を擦り寄せてきた。
「お前からこんなこと言われるなんざ、正直夢でも見てるんじゃねえかと思った。凄く、嬉しかった……」
肩に押し当てられた額が温くて、それが堪らなく愛しくて、小十郎は政宗の手を握りながら唇を奪った。
「ん……、ぅ」
煩悩を払う除夜の鐘が寒空の下で鳴り響く中、こんなことをしていていいのだろうか、と思いながらも政宗の着物の合わせに手を滑り込ませようとしたそのとき、焦げた臭いが漂ってきた。
「あ、餅が」
「これはいけませんな」
黒焦げになった餅を二人でつつき、顔を見合わせて笑った。
「年越しくらいは、大人しくしてるか」
「そうですね……」
新しい餅を乗せ、また笑い合う。
それでも身体だけは寄せ合って、除夜の鐘と餅を肴に酒を酌み交わした。
年が明けても多忙を極めることは変わりなく、次またいつ会えるか分からない。
こうして二人きりで過ごせる時間の貴重さと政宗の体温の有り難みを噛み締めながら、小十郎は腕の中の政宗を抱き締め直すのだった。
ゴォン、と一際強く鐘が鳴った。
「あ」
「明けましたな」
食んでいた餅を離し、持っていた御猪口を置き、二人して向き合った。
「明けましておめでとうございます」
「ああ、おめでとう。今年も、宜しく頼む」
「はっ!」
小十郎は、深々と頭を垂れる。
頭を上げた途端、引き寄せられたかと思うと、熱烈的な口吸いを受けた。
「さあ小十郎、姫始めだ!」
酒も入り、うきうきとした様子で着物を脱がせにかかる政宗に、正直安心した小十郎であった。
「これぞ、政宗様ですな」
「ん?」
「いえ」
例えどんな相手でも己が信じた道を突き進む、それが伊達政宗という男だ。
除夜の鐘ごときで払えるような男ではない。
押し倒しにかかった政宗の身体を抱き抱えひっくり返し、今度こそ着物の合わせに手を滑り込ませる。
小十郎とて、嫌があるわけがかい。
政宗の肌に口付けながら、自分も大概だな、と思う小十郎であった。


<了>

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