戦国BASARA

□キミの幸せ祈るコトバ
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仙台本社に出張初日のこと。
出社した途端、小十郎は社長自らの内線で呼び出された。
社長から内線を貰うなんて、非常に稀なことだ。急いで社長室に向かうと、社長こと伊達輝宗が神妙な面持ちで待ち構えていた。
「すまなかったな、出社早々急に呼び出してしまって」
「いえ、とんでもありません。ご用件は何でございましょう」
「ふむ…」
すると輝宗が、神妙な面持ちから、思案するような表情に変わった。
照宗の嫡男である政宗の教育係として伊達家に仕えて十年余り、このような歯切れの悪い主人を小十郎は初めて見た。
それは、言葉を選んでいるようにも見えた。
「あの」
「して片倉…いや小十郎。政宗とは、上手くやっているかね」
「はい、勿論で御座います」
政宗は東京の大学への進学を期に、大学近くのマンションで下宿をすることになった。
期を同じくして小十郎も昇進し、プロジェクトリーダーとして東京支社への栄転が決まった。
箱入り息子に突然一人暮らしをさせるのは不安だということで、かくして小十郎と政宗の二人暮らしが始まったのだった。
共に暮らすようになって、もう二年になる。
「あれは、きちんと家事をしているか?」
「はい、よく動いて下さいます」
「アルバイトも学校も、真面目に通っているか?」
「はい、私も目を光らせております故」
「……そうか」
輝宗は、安心したように溜め息をついた。
仙台出張の度に、小十郎は政宗のことを細かく訊かれる。父としては、息子のことが心配でならないのだろう。
「小十郎」
「は」
「政宗は、お前に迷惑をかけてやいないか?」
「はい、勿論で。逆に色々、気付いて下さることの方が多く」
「そうか。我儘を言ったり、奔放な振る舞いはしてないか?」
「は、勿論で…」
答えながら、小十郎は違和感を覚えた。
今までに、訊かれたことのない質問だったからだ。
「それならば、いい。小十郎、政宗は少々自由に育ててしまったが、根は優しい良い子なんだ。これからも、宜しく頼む」
そして、ギュッと手を握られた。
「…は、はい、勿論で御座います」
すると輝宗は、心底安堵したような顔になった。







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